坪内撚糸から少し北に行ったところにノコギリ屋根の工場がある。「ノコギリ屋根」とは、片流れ屋根を連続した屋根のことで、昭和の繊維産業の工場によく見られたものだ。
群馬県では桐生市に多く、いまでも有名・無名のノコギリ屋根建築がたくさん残っているが、前橋市街で残っているのはここだけではないか。
敷地は風呂川に面している。聞いた話では、岩崎撚糸という撚糸工場の建物だという。
屋根にブルーシートがかかっていて、だいぶ痛んできているので、いつまでこの建物が残るのか気掛かりだ。
ノコギリ屋根の特徴は、屋根の勾配は必ず南側に流れるようになっていて、北側の垂直の壁にはガラス窓がはめられていることだ。これは北側から間接的に太陽光を入れることで、室内をほどよい明るさにするためだという。
しかし見ようによっては、屋根に谷ができてしまい、雨じまいがかなり悪そうだ。ノコギリ屋根は長期間放置するのには適さないのではないだろうか。
個人の敷地にあるので、あまり近くでは観察できないが、冬場に樹が落葉すると建物の様子がよく見えるようになる。
(2013年01月20日訪問)