十六本堰

怖いような堰だったが、平成12年に改修された。

(群馬県前橋市城東町4丁目)

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前橋市街を流れる広瀬川は、かつて製糸とは深い関係があった。製糸工場ではたくさんの水を使うし、古い時代には水車動力を使ったからだ。広瀬川にそって多くの製糸工場があったのだ。

その広瀬川が、三河町の付近で大きく2つの流れに分水される。

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右は端気川(はけがわ)で、これまで見てきた環濠集落地帯の台地を潤して樋越付近で利根川に注ぐ用水だ。

左の水門の方は広瀬川の本流で、おおむね古利根川の南の崖線に沿って流れて、氾濫原の田畑を潤す。

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ここには、むかしコンクリで出来た原始的な堰があって、その堰の上は、人ひとりが歩けるくらいの幅の頼りないキャットウォークがあった。記憶では手すりは片側しかなく、増水したときなどは足のすぐ下で轟々と音を立てて滝のように落ちる水が怖いほどだった。

いまにして思えば、あんな危ない場所をよく放置していたものだが、子供のころはそのキャットウォークに立って水しぶきを見るのはちょっとした勇気試しだった。

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その堰も平成12年に可動式の水門に変わり、キャットウォークもなくなってしまった。

もう少しまえに写真を撮っておけばよかった。

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この堰から川下の広瀬川の岸辺には製糸工場が並び、大きな養鯉場もあった。

今回の探索で、なにか痕跡でもないかと思って探したが、区画整理が進んでおり住宅地に変わってしまっていた。ここも十年来るのが遅かったのだ。

この辺りはかつては迷路のような町で、方向を間違えて迷うことが多い場所だったそうだが、それも昔話になるのだろう。

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水門の南岸には、神社のようなものがある。

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川岸にせり出すようにお篭り所らしき部屋が作られているのが面白い。子供のころ、何度も来ていた場所だが、このお堂の記憶はなかった。

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堰のすぐそばにあった町工場のような家。

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こういう家が、かつて座繰製糸所だったのではないかと想像をたくましくしてみる。

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堰から下流の広瀬川。

この左側はいま更地だが、関口製糸という製糸工場があった場所だ。

(2013年01月27日訪問)