カレン州の州都、パアン。
4ヶ月ぶり4度目の滞在は、もはや「帰ってきたなぁ」という気持ちである。
私はホテルにこもってデスクワークをしていたのだが、職場のスタッフが遊びに誘いに来た。車で地域のお祭りの様子を見に行こうというのだ。
パアン市内にもたくさんの水掛け所が作られている。メインの会場は時計塔の前のバス乗り場周辺なのだが、人気があるのはサルウィン川に沿った通り。
なにしろ川からポンプで水を汲み上げるので、水量が段違いなのだ。
川沿いにたくさんの水掛け所が並ぶ。
ミャンマーは車両が右側通行なので、水掛けは上り車線(ヤンゴン方向の車線)で行う。
水を浴びたい車両はまず市場方面に行ってから、郊外へ向かって走るのである。
パアン市の水掛け祭りにおける、車両の特性について説明しよう。
ヤンゴン市街では交通規制があるため、オートバイは通行できなかったが、パアンでは若者たちの足はオートバイである。
近隣の村々からも大挙して若者が押し寄せ、水を浴びるために列をなす。
そしてもうひとつパアン市の特徴的な乗り物が、三輪タクシーである。
むかし日本にもあったオート三輪のような乗り物だ。荷台にベンチがついていて6人くらいの乗客が合い向かいに座る。運転席は前輪駆動のオートバイのようになっている。加速が悪いため、この車種もたぶんヤンゴン市内では規制されているのだろう。
だが、パアン市でタクシーといえばほぼこれで、ヤンゴンのようなワゴン車型の四輪車のタクシーは見かけない。
都会の水掛け祭りの様子はヤンゴンでたくさん見てきたので、パアンの郊外、つまり田舎の水掛けの様子を紹介しよう。
田舎道にはところどころに写真のような素朴な水掛け所が現出する。ドラム缶に水をため、通行する人々に洗面器で水をかけるのである。
血気盛んな若者がいる村では、道の中央をドラム缶で封鎖してゲートのようなものを作り、通行する車両をほぼ強制的に停車させる場所もある。
バイクの場合は、ぶっかけるのではなくて手桶や洗面器で水を垂らされる。
女の子など取り囲まれて執拗に掛けられていた。でも本人達もハメを外したくてわざと出かけてきているのだろうな。
ズェガビン通りのガバーロンパゴタの付近の水掛け所。
道路に段差を作って、減速しなければ通れないようにしてあった。ハイになって踊っている若者もいる。
「ドラッグやってるかも知れないな…」ミャンマー人の職場スタッフがつぶやく。
このあたりでは比較的最近まで麻薬栽培が盛んだった。いまは目のつくころには植わっていないが、それでもまだ「麻薬をなくそう」というようなスローガンの看板を目にする。
さて、カレン州の田舎の水掛け祭りの特徴は、タナカを溶いた液を塗りたくることである。
タナカというのは、ミャンマー人が顔に塗るファンデーションで、香木の樹皮をすり下ろしたものである。涼しくて日焼け止めにもなると言われている。
これを通行人や、車に塗り付けるのである。
主に女の子や子供が塗ってくる。
車にタナカを塗られたら、すぐに洗車したりせずにそのままにしておくみたいだ。
きっと塗られたほうが縁起がいいという感じなのだろう。
私が住んでいる群馬県にも墨つけ祭りという行事があり、かつて取材したことがあるのでそのうち紹介したい。
接待所のある水掛け所。
道端でお菓子やジュースを振る舞うところもあるし、このように接待所を作って、そこでゆっくりもてなしてくれるところもある。
接待所はパダウの花できれいに飾られていた。
パダウは、この季節にさく黄色い花。
ミャンマー人にとって、日本のサクラに相当する季節を象徴する花だそうだ。
さらに郊外へ。道路が舗装されていない本当の田舎だ。
そういう道にもミャンマーの名物、道端の水がめがあり日頃から道行く人に水が供えられている。
この水がめを管理している家族が水掛けするのだろう。
こんな風景が、ミャンマーの元々の水掛け祭りなのかもしれない。
村の水掛け祭りは子供が主役のようだ。
お接待をしている水掛け所があった。
もち米で作られた油っこいライスケーキをもらった。
もち米とココナツで作られた餅である。日本の
そのあと、モンロンジィポゥとかいう、ミャンマー団子作りを手伝いに行った。
私はトッピングのココナツをピーラーで削る係。
白玉の中にオオギヤシの黒砂糖を入れて茹で上げたもので、お正月のお菓子である。
大きな鍋で煮ると、中の黒砂糖にも水が染み込んでトロトロになる。
団子が浮かんできたらすぐに水に入れて締める。
茹で上げた団子に、たっぷりとココナツをまぶす。
これ、かなり美味しいと思う。ただ甘いだけでなくちょっと塩も入っているので食べやすい。
作った人の味付けが上手だったのかも知れないが、ミャンマーの甘いお菓子のなかで一番好きだ。
接待用の弁当箱に詰める。
でき上がったミャンマー団子は道端で配布した。
(2015年04月15日訪問)