アゥンペティ僧院を過ぎ、ノゥトゥディ山を目指して東へ、東へと走る。
周囲は暑季の乾き切った水田。この道は雨季には川になるだろう。季節限定のルートだ。
家もない、樹もない、もちろん電柱もない。乾き切った大地を砂煙を上げながら、ひとりバイクで走り抜ける。あまりにもワイルドな寺巡り。
ノゥトゥディ山が近づくと、その北端にパゴダが見えてきた。
以前に訪れたときには気付かなかったパゴダだ。
パゴダの入口にはパソコンで印刷したと思われる案内があった。あとで職場のスタッフに見てもらったらカレン語(?)で「ようこそ」と書かれているようだ。
この道を通る人で、村人以外ってどのくらいいるんだ?
まあ、いま私が通って、この寺に入ろうとしているわけだが。
小さなパゴダだ。
山の尾根にもパゴダが見えるが、簡単には行けそうにない。まったく、よくあんなところまでセメントや水を担ぎ上げたものだ。
パゴダまでの参道は、コンクリでできた橋になっている。雨季には左側は用水、右側は水田となるのだろう。
境内の入口まで来たが、お坊さんが出てくる様子もなく、
乾いた田んぼの地面で不思議な昆虫を見つけた。
赤いコオロギ?
僧房は無人だった。
質素だが、そもそもミャンマーの僧侶は質素なところに住んでいるので、充分住めそうな寺だ。
もちろん、電気も水道もない場所なのだが、井戸はある。
パゴダに登ってみることにした。
途中には小さなお堂。
内部にはスティーブ・ジョブスの像。
パゴダのある築山へは橋懸かりがあった。
楽しませてくれる。
自然の岩の上に石垣を積んである。
ここからは、履物を脱いで行こう。
パゴダに登った瞬間、神秘的な体験をした。
風が凪ぎ、突然すべての音が消えたのだ。
どんなに耳を澄ませてみても、木の葉のそよぐ音、鳥や虫の鳴き声もしない。いままでに経験したことがない、すべての音がどこかに吸い込まれたような状態。
かすかに人が話す声が聞こえ、静寂は破られた。
200mくらい離れた場所を二人の男が歩きながら、何かをしゃべっている。普通ならば聞こえるはずがないような距離なのだが、他人のイヤフォンから漏れる音楽のように耳元でカサカサと声が聞こえる。
暑季ってこんなに生きものの気配がないのか。
見渡すかぎりの田んぼも乾き切ってまるで荒野のようだ。
パゴダに付属するタコンタイは、てっぺんがとがっている。とがっているというよりも、上に仏塔が載っていると見るべきなのだろう。
あまり例は多くないが、たとえばヤンゴンのカバーエーパゴダで同じようなものを見たことがある。
築山から降りる階段があった。
ん? こんなところから登れたっけ?
階段を降りたところには瞑想所があるのだった。
仏殿も兼ねている。
この瞑想所は下から直接登ることはできず、いったんパゴダの築山に登ってから階段を降りることでしか行けない場所にある。
くぅ~~~しびれる!
小さなパゴダだが、いろいろと立体的に楽しめる造りだった。
山の尾根のパゴダに行くには、ちょっとした薮漕ぎが必要そうだ。
どんな生きもの(主として危険な虫など)がいるかわからないので、ミャンマーでは薮漕ぎはしないつもりだ。おそらく登ったら眺めはいいのだろうな。
(2015年04月28日訪問)