高松港からフェリーで宇野港へ、そこから倉敷市街地へ向かう。宇高航路のフェリーは国道30号線の一部として機能していて、料金も安く本数も多いのでまるで東京都民が山手線に乗るようにスッと乗れるし、宇野港から倉敷までの道も何度も通って慣れている。
私がなぜこの道をよく通るのかというと、四国から中国や山陰へと向かうには倉敷付近から高梁川をさかのぼるように中国山地へ分け入っていくのが都合がいいからだ。だがそういう移動をする人は意外に少ないのかもしれない。宇野港から倉敷市街へは道なりに走ればよいようなルートはなく、けっこう細い道やわかりにくい交差点などをいくつも通っていく。ここを曲がったら信号が少ないかな、この踏み切りを渡ったら近いかな、行けると思ったら橋がない、などなど、どれが正解なのかわからないような道なのだ。きわめつけは、道がJR倉敷駅で突き当り、小さな踏み切りを通過するためにデパートの横の路地のような細い道を進まなければならないことだった。そしてその踏み切りを越えると、宇野から倉敷までの煩わしさがウソのように、それこそ日本海まで道なりに走れるのである。
ではJR山陽本線以南の倉敷市のわかりにくい道を走るのが嫌いかというとそんなことはない。ぼんやり走っていたら迷ってしまうようなそのイメージは、悪い夢に出てくる懐かしい街のようで、むしろ心魅かれる道といってもいいかも知れない。
そんな倉敷市街にある「美観地区」は今回初めて訪れるのであるが、なにしろ横をよく通過していたことから、距離感は近く感じられた。
さて、倉敷美観地区といえば日本でも最もミーハーな町並み観光地のひとつであり、いまさら私が紹介するのもどうかと思うほどの場所である。
これまで、何万、何十万人という観光客がここでの写真をネットに投稿し、あるいはプロやノンプロ写真家やモデルさんたちが美麗なコンテンツを生産したことだろう。おそらく私があらためて紹介しなければならないものは片隅にすら存在せず、何一つ珍しいものを発見できないだろうと思われる。
それでも一度くらいはこの街を観光してみるのもいいんじゃないだろうか。今回はかなり日程に余裕があるのだ。
駅に近い観光駐車場に車を置き、そこから町並みをひと回りすることにした。まずは鶴形山の山麓に沿って南へ歩き、帰りは倉敷川の運河沿いに戻ってくるというルートである。
アーケードの中を歩いていると、阿智神社入口という石段があった。
あまり下調べはしていないので、まずこの神社から順番に攻略していくことにしようか。
それにしても観光客がほとんどいないな。
少し石段を上がると、道は寺の裏側へ通じていた。
神社の前に先にこの寺を見ておこう。寺の横の路地を抜けて、寺の表側へと回り込む。
寺の名前は観龍寺。
山門は薬医門。立派な門だが、年代は江戸末期か明治くらいだろうと思われた。
山門を入るとすぐ右側に妙見社がある。
拝殿、本殿にわかれている本格的な鎮守社だ。
山門の左側には鐘堂。
その先には観月殿がある。当サイトではこのように景色を眺めるために崖につくられた休憩所を観月殿と呼んでいる。
扁額には「仙掌庵」とあった。
中は普通の信徒休憩所だった。
観月殿からの眺めはあまりぱっとしない。
境内の標高が低いからだ。
本堂。
本堂の左側には稲荷堂。
本堂の右側には大師堂。
大師堂の右側には中門がある。
中門の中は庭になっていて、書院と思われる建物が見える。
その右側には庫裏。
ほかにいくつかの小堂があった。
手前から地蔵堂、千手観音堂、薬師堂。
(2003年04月27日訪問)