総社宮の南参道の角に明治末期に建てられた警察署の建物がある。
明治43年に竣工し、昭和34年まで現役の警察署の建物として使われた。現在は郷土博物館になっている。拝観料は無料。
よほどのことがなければ資料館は見ないのだが、もうきょうの予定はすべて終わったので見学することにした。
この建物の前の道は古い街道で、警察署があってもおかしくなさそうな場所だ。おそらく移築ではないだろうと思う。基礎はレンガ積みになっている。
建物の角は外観が塔屋になっていて、内部はらせん階段である。
こうした塔屋を持つ洋館では、塔屋内は立ち入り禁止になっている場合が多い。特に、塔屋が三階で鐘楼や時計塔になっている場合はほぼ絶望的である。
ところがこの建物では、二階へ行くためのらせん階段を格納する階段室であるため、中に入ることができる。
内部は八角形。
狭い隙間が屈曲しながら続いている空間が面白い。
塔屋の二階。
こうした場所には署長室などがありがちだが、ここは階段室である種のデッドスペースになってしまっている。
二階には備中売薬の資料が充実している。
備中売薬とは、いわゆる「富山の薬売り」のように、家庭に常備薬を預けておき、定期的に売人が巡回して使った分だけ料金を徴収するという販売方法。
備中売薬の歴史は古く、江戸初期にまでさかのぼる。
だが実際にもっとも繁栄したのは明治~戦前であったろう。
その時代の薬のパッケージの実物が飾られている。
備中売薬の代表的な薬はタコのマークをアイコンにした腹痛の丸薬だという。
コレクションは充実していて見飽きない。
置き薬の薬箱にもさまざまなデザインがあったのだ。
郷土資料館というと、どこでも同じような民具が並んでいることが多いので飽きてしまうが、この資料館は展示内容が総社地方独特のテーマに特化しており、興味深く見学できた。
(2003年05月03日訪問)