総社宮

長い回廊のある神社。

(岡山県総社市総社2丁目)

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「総社」とは律令時代に国府に近接して造営された神社のことである。もともと中央から派遣された国司はその国の主要神社を巡拝しなければならないという制度があったのが、後に、その地方の主要神社を合祀した「総社」という神社を建て、国司はその神社1ヶ所に詣でるだけでよくなった。ここ、総社市の総社宮は、備中国(びっちゅうのくに)の総社である。

駐車場は境内東参道に無料駐車場があり、20台くらいとめられる。メインの参道は南参道になるので、まず南から入ろう。

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鳥居を過ぎて80mほど歩くと、回廊が見えてくる。

「回廊」と言ってしまうと、一般的には社殿をロの字型に取り囲む廊下というイメージだが、ここ総社宮の回廊は参道を濡れずに歩けるアーケード状のものだ。

すぐ近くにある吉備津神社の回廊に近い感じのもので、おそらく影響を受けていると思われる。

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回廊の途中には八脚門の随身門。

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門は回廊に挟み込まれているため、回廊の中を歩いていると門の全体は見えない。

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回廊の中の光景。

なかなか立派な回廊だ。この回廊はどうしても見ておきたかった。

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回廊の長さは最長部で80mほどか。

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不思議なことに、回廊は南北ではなく、南東→北西とななめに造られている。

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そのため、東面している拝殿とは45度の角度で接合している。

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回廊は社務所方面にも分岐しているが、中途半端な角度で接合している。

想像だが、この神社はもともと東参道がメインで、南参道は後付けなのではないか。経緯としては、国府が神社の東にあり政庁と拝殿を結ぶ参道がもともとあったのが、国府消滅後、南を通っている街道に面して別の参道を造ったのではないか。

回廊は古い建物ではない。

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本殿は入母屋平入りの建物。

拝殿と本殿の間には幣殿がある。

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本殿を後ろから見たところ。

かなり新しそう。昭和50年代くらいの感じ。

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本殿の廻りにある末社群。

国中の神社を合祀しているという関係からか、摂社、末社が多い。

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末社の祇園宮。

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祇園神社は池の中の島に建っている。

この池は沼田池といって、総社宮の境内地の半分くらいの面積を占めている巨大な池だ。

池の一番大きい島には、厳島神社がある。

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寺院っぽい建物は神楽殿。もしかすると神宮寺の一部かもしれない。

右側に見える小祠は荒神社。

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白壁の建物は神輿庫。

右の赤い流造の祠は大神(おおみわ)神社。

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東参道にある沼田天満宮。

小さいほうの祠はえびす神社。

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東参道側にも少し回廊が延びている。

東参道から駐車場のほうへ戻る途中には石橋がある。

参道が2方向あるのと、境内地にばらばらに末社が並んでいるので、まとまりのない感じの社殿配置に感じられる。

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石橋の横には社家がある。

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境内で見かけた石灯籠。

年号が西暦で入っている! 非常に珍しいのではないか。

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東参道の入口はこんな感じ。

長年見たいと思っていた回廊をやっと見ることができたが、回廊や山門はかなり新しい建築だったのがちょっと残念。全体的に建物の多くが昭和後期くらいの印象だ。

今日は総社市街でこの神社だけに立ち寄ったが、普通の観光コースであれば、吉備津神社国分寺と一緒に参拝するのがよいだろうと思う。

(2003年05月03日訪問)

図解/古建築入門: 日本建築はどう造られているか

単行本 – 1990/11/1
西 和夫 (著)

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寺院建築の架構が最も理解しやすく書かれている本だと思います。