トゥンウェン山パゴダから同じ道を通って帰るのはしゃくなので、そのまま北上して大雁塔のあるウィブラー山パゴダを再訪して休憩。そのあとまだ宿へは戻らず、西日を浴びながらミャインジーグー街道を北上していた。
日没までには間があるので、気になっている寺をひとつチェックしてみることにしたのだ。このミャインジーグー街道も初めて通ったときはずいぶん遠く感じたが、いまでは見慣れた風景に変わってしまった。
途中、間違った道に入ってしまい、畑仕事をしているミャンマー人に身振り手振りでなんとか道を教えてもらい、やっと寺の入口のあるタキンロン村に着いたときはもう日が暮れかかっていた。
軽いキモチで来ているが、ミャインジーグー街道をここまで北上するのは初めて。
日が暮れないウチに、参詣しなければ。
村から西へ伸びる枝道を500mほど入ると、小山のふもとに寺の門があった。
そして境内を見渡すと・・・鍾乳洞!!
そう、ここは洞窟寺院なのだ。
境内にはほかにパゴダや仏殿などはないので、鍾乳洞へ直行。
入口には浮かれデブの鐘つき柱。これはよくあるモチーフ。何者なのかはいまのところ不明。
鍾乳洞の入口はきれいにタイルが貼られているのでサンダルを脱いで入洞する。
鍾乳洞は高低差がなく、水平に続いている。カレン州の貫通型鍾乳洞によくあるパターン。
内部にはたくさんの仏像が並んでいた。
入口付近にあった巨大な仏龕状の
この仏龕に配されているたの小仏たちもおっぱい仏で、見えにくいが左下などは半裸の踊り子のような像もある。仏陀の修行の邪魔をしに来たマーラの娘か。
この巨大仏龕の横には階段がある。
とりあえず登ってみよう。
登ってみても仏龕の裏側のあたりで行き止まりになっているだけだった。
鍾乳洞入口の寝釈迦などを上から眺められるというだけで、特に意味はなさそう。
階段を下りてきたら、お寺のお坊さんが近づいてきた。
どうやら案内してくれるらしい。
あまりしゃべらないお坊さんで、ひたすらにスタスタと歩いていってしまうので、仏像を跪拝する機会も与えられない。
鍾乳洞は深さ150mくらいで、最深部には巨大な寝釈迦がある。
その寝釈迦のさらに奥で山の裏側に貫通していて、日光が後光のように差し込んできていた。貫通部分のほうへは上がっていくルートはないので、ここが参詣できる最深部だ。
だが鍾乳洞は内部でカーブしていて、元来たのとは別の出口へと通じていた。
お坊さんは何も言わず、洞窟から出て行く。私は洞内の写真を撮るのもそこそこに、駆け足でお坊さんの後を追った。
どこへ行くのだろう?
なんで仏像が並ぶこの寺のメインとも思われる洞窟をもっとゆっくり見せてくれないのだろう?
いったん洞窟を出て、すこし山を巻くとまた別の洞窟があった。この洞窟には照明がなく、仏像などもない。純然たる鍾乳洞だ。
足下は水が流れたような湿った粘土。かつてタングリー洞窟という開発中の洞窟寺院で見たのとそっくりだ。
私が懐中電灯を持っているからいいようなものの、そうでなければとても入れるような洞窟ではない。
途中からだんだんと天井が低くなり、かがまなければ前進できなくなってきた。深さはここまでで100mほどか。
お坊さんはというと「さぁ、奥へ入りなさい、おもしろいよ?」というようなことを言ってる。
いや、いいです、ここ粘土でドロドロになるでしょ。
もしかすると奥のほうにホールとかあって、貫通しているのかもしれないが。
洞窟探検を辞退すると、お坊さんは洞窟を出て急な階段を登り始めた。この階段は崖の途中まで続いているが、それ以上先にはルートがなく行き止まりという不思議な階段だ。
お坊さんは階段を登りきったところから岩場にしがみつきながらさらに登っていく。
わけがわからないままに私も岩をよじ登ってついていく。
すると岩と岩の裂け目のところでお坊さんは足を踏ん張って空中にカラダを支えていた。
その裂け目の山側に小さなくぼみがあり、そこから水が湧いているのだ。
空き缶を切り抜いて作った小さなコップが置いてあり、お坊さんが水を汲んでくれた。
・・・湧き水とはいえ、生水は飲みたくないなあ・・・
でもお坊さんの好意を無にはできない。一気に飲み干してお坊さんに感謝の意を伝えた。
ありがとう、アグレッシブなお坊さん。
感謝の気持ちをこめ、500円寄進した。
その湧き水ポイントからさらに少し山を巻いたところに石段があった。
お坊さんに身振り手振りで尋ねたら「山頂まで行けるから、いってごらん」というようなことを言っている。山頂に見えたパゴダまで登れるのだろう。
途中、岩場があるといけないので、いったん鍾乳洞の入口まで引き返してサンダルをとってきて、サンダル履きで登ることにした。
きょうはすでにトゥンウェン山に登ったあとなので、少し足にきているが、もうやけくそだ。
石段はあるが、例によってものすごい斜度。容赦なく体力が奪われる。
一番斜度のあるところは45度を超えているのではないか。登るときは両手両足でしがみつきながら、下るときは後ろ向きにならないと怖くて降りられないほどの斜度。
これを階段と言っていいのだろうか・・・。
ふらふらになりながら山頂へ到着。
最後のほうは石段がキツイので、最後の踊り場で荷物を置いてカメラとカラダだけで山頂へ。
山麓からの所要時間は20分弱。標高は150mくらいだろうか。
山頂にはパゴダと小さな小屋があった。
ほかに鐘つき柱。
周囲は360度の展望がある。
南のほうにはノンライ山パゴダが見えている。あの山頂からこのパゴダを発見してから1年が経った。
休んでいるうちに夕日が西の山並みに沈んでいった。ここから宿までは20kmほどの道のりがあるから、帰路の途中で真っ暗になるだろう。だからといってまだ慌てる必要もない。しばらくは雄大なカレン州の大地に見とれていよう。
(2016年12月26日訪問)