前ページからのつづき。前ページでは禅昌寺の回廊部分を一周しながら堂宇について説明した。
このページでは回廊を通らず、境内中央の参道を直進しながら本堂や書院、さらには本堂の裏側にある庭園や奥の院を紹介していく。
山門の手前には水盤舎がある。
山門を過ぎると、回廊の内側は庭園になっていて、中央に石畳の参道がある。
石畳の途中、観音堂の前あたりには
「放生池」とは、捕えた魚などを逃がすことで功徳を積む儀式を行なうための装置である。大きな禅院ではよく見かけるもので、七堂伽藍の構成要素からは漏れているものの、準七堂と言ってもいいくらい重要な要素なのだ。
さてここで、もう一度禅宗の七堂伽藍について復習してみる。それは「山門、仏殿、
しかしこの寺では山門→放生池の順番になっている。さきほど見た瑠璃光寺もこのパターンだった。当地では回廊の内側には庭園を作る発想なのだ。こうしたレイアウトが誕生した根幹には、寺の中心となる仏殿が存在しないことがあるのではないか。回廊内側の空間がさびしくならぬよう、庭木や池をしつらえるのだろう。
この寺のように仏殿がなく本堂と山門を結ぶ型式の回廊、当サイトで「妙応寺型(仮)」と呼んでいるものはかなりの数が(おそらく100ヶ寺前後は)存在する。全国で確認できる普遍的なパターンなのである。教科書的な七堂伽藍の概念とは少し違うが「総門、山門、回廊、本堂、禅堂、庫裏、鐘楼」あたりを構成要素とした近世地方禅院の理想的伽藍パターンが提案できるのではないか。
さて、ここからはお堂の中を見せていただくことにしよう。
入り口は本堂の右側の「玄関」である。
まずは本堂へお参り。
本堂の内部は全体的に畳敷きで、禅宗の本堂というよりは方丈のような構成だ。
玄関の右側には「書院」とされる建物がある。
ちゃぶ台が並べられていて、信徒が使う客殿のような機能を持つ和室だ。
伽藍配置図で「新座敷」と書かれている建物の南側には瀟洒な中庭がある。
新座敷の北側にも小さな庭。
書院の北側から本堂の北側にかけては「澄心池」という大きな池がる。
書院から眺めた澄心池。
今回の旅で見てきた著名な庭のような凄みはないけれど、落ち着いた庭で、むしろ心静かにいつまでも観賞できるような庭だ。
本堂の北側には謎の窓があった。
本尊が滝でも見るのか?
伽藍配置図によれば、寺の裏山に奥の院があるというので行ってみた。
途中には地蔵堂と賽の河原。
これ、昔からあるのかなぁ?
その先に宝形屋根のお堂があった。
これが奥の院かと思って引き返したが、よくよく伽藍配置図を見るとこれはたぶん「中の院」で、奥の院は別にあるようだ。
最後になってしまったが、禅昌寺へ向かう参道には大黒松がある。
市指定の保存樹になっていて、車道は松をよけるように曲がっている。
(2003年09月06日訪問)