国道178号線を走っていると、いやがうえにも目に入ってくる物体があった。
駅構内にそそり立つそれは、一目見てわかる、蒸気機関車用の給水塔。蒸気機関車は石炭を燃料とするが、タービンを動かすのは水。大量の水も必要とするのだ。
浜坂駅は明治45年に餘部鉄橋が開通するまで、わずかな期間山陰本線上りの折り返し駅だった歴史があり、こうした設備が整えられた駅なのだという。
給水塔が造られたのは明治44年という。
途中の節くれている部分の上はコンクリ製、その上に鉄の蓋があるように見える。建設当初は鉄製のタンクが載っていたのだろう。
下部の竿部分はレンガ造でたぶん中空なのではないかと思う。
写真を撮ったときは、こんなものは遠からず消えてしまうんだろうな、と思ったが意外に残り続けている。それより先に、有名な餘部鉄橋のほうがなくなってしまった。
実はこの日もこのあと餘部鉄橋まで行ってみたのだが、なんとなく写真を撮らずに立ち去ってしまった。なんでだろう、餘部鉄橋には2回訪れたのだが、2回ともなんとなく観賞するだけで写真を撮らずじまい。
たぶん、良い構図で撮影できるポイントを探すのがおっくうだったり、橋に対して自分なりに伝えたい何かを見いだせなかったのだと思う。どうせまた来るから、そのときにきっちり写真を撮るかなどと、考えてしまうのだ。
その餘部鉄橋ももうない。
でもたくさんの鉄道マニアの人々が、あらゆる角度、あらゆる季節、あらゆる車両との組み合わせで撮影しているだろうから、特に私自身は残念な気持ちもない。
(2005年05月03日訪問)