前回の暑季の渡航から3ヶ月、今度は雨季のミャンマーである。私の派遣先カレン州はまだ日本の観光客は少ない地域で、そもそもどうやって旅行プランを立てていいのかわかりにくいエリアでもある。そこで今回はヤンゴンからカレン州までの移動について詳しく書いてみようと思う。
カレン州への一般的な移動方法として考えられるのは①チャーター車、②長距離バスであろう。モーラミャインもまとめて観光するのであれば③鉄道という方法もあるが、乗り鉄の人でもなければメリットはない。飛行機で現地入りする方法はない。
①のチャーター車はヤンゴンからタクシーを借り切ってカレン州に入り、現地でもそのタクシーを使うという方法。ミャンマーはタクシー代が高いので大名旅行的ではあるが、日本国内で温泉旅館に泊まる旅行と比べれば出費ではない。なによりカレン州には四輪車のタクシーがまったく走っていないので、現地で四輪車で移動できることは何かと便利だし、行動範囲がぐっと広がるので検討すべきだ。車のチャーターは在ヤンゴンの旅行代理店に予約を頼むことになる。
②の長距離バスは一般的な移動手段。インターネットで予約/決済できて安上がり。バスは車両が大型なので乗り心地はむしろタクシーよりもよい。問題があるとすればカレン州での足を別に確保しなければならないということだ。カレン州には(2019年現在)四輪車のタクシーはまったく走っていない。ホテルで呼んでもらっても来るのは三輪バイクかトゥクトゥクである。そうした三輪の乗物はスピードも出ないし馬力もないので、移動距離が長くなると圧倒的に不利。レンタルバイク屋もあるので、バックパッカーの多くはオートバイを借りて移動している。(私はカレン州で買ったオートバイを現地に預けてある。右側通行なので日本人には慣れないし、道路に大穴が空いていたりするので注意が必要だ。)とはいえ、多くの旅行者が選択するのは長距離バスであろう。
そこで長距離バスでカレン州へ入るまでの流れを簡単に紹介しよう。
長距離バスの発着場アウンミンガラーバスターミナルはヤンゴンの郊外にある。多くの旅行者が泊まるダウンタウンエリアからは距離で約20km、所要時間は曜日や時間帯にもよるが早くて45分、渋滞すれば90分以上かかるので余裕を持って移動したい。
バスターミナルへの移動方法は市民の足である乗合バス(YBS)、もしくはタクシー。スーツケースなどの荷物があればほぼタクシー一択となる。ヤンゴンのタクシー料金はかなり高いので、配車アプリのGrabを使うのがおすすめ。それでも800~1,000円はかかる。
ここがアウンミンガラーバスターミナルの入口。
タクシーで移動すれば、バス会社の前まで乗りつけてくれるので、この入口の表札に気付くこともないだろう。
逆に言えばYBSを使う場合、自分が乗るバスがどこから出るのか自力で見つけなければならない。ターミナルはかなり広いし、ミャンマー語だらけで英語はほとんどないからバス会社を見つけるのは容易ではない。
ターミナルの入口には小商いをする露天商や、客待ちのバイクタクシーがいる。
バイクタクシーはこの写真のようにゼッケンを付けているのでわかるが、ヤンゴン市内にはバイクは乗り入れできないので近距離専門だ。
ターミナル入口には料金所があり、タクシーが中に入るにはわずかだが料金が必要。もちろん歩いて入るぶんにはタダである。入場料はタクシー料金に含まれているので精算する必要はない。
ターミナルの中に入るとこんな感じ。たくさんの色鮮やかなバスが並んでいるが、すべて別の会社のバスなのである。バス会社の建物は外周に並んでいるのだが、間口はバス1台分。会社の前に1台の駐車スペースがあり、そこから次々に発着するというシステムなのだ。
はっきり言って、これが日本語で書いてあったとしても、バス会社を見つけるのは簡単ではない。もし判らなければ、そこらの人に聞いて教えてもらったほうが早い。
ターミナル内には簡単な食堂や雑貨屋などがある。
バス内でもミネラルウォーターが支給されるが、お菓子などはここらで調達してもいいだろう。
今回わたしが利用するのは、ミバゴンという会社。日に何便かあるVIPバスは3列シートで車も新しく快適。一昔前まで中古の日本の観光バスで冷房がまともに効かないというような車も多かったので雲泥の違いだ。
3列シートのVIPバスの料金はパアンまで外国人料金で800円程度、4列シートは500円程度。ヤンゴン→バスターミナルのタクシー代よりも安い。
バス会社についたら、カウンターで指定席を発券してもらう。まわりはミャンマー語だらけだけれど、カウンターでは英語は通じる。通じなくても、予約のeチケットを見せれば問題ないだろう。
手荷物はスーツケース2つまでは無料。それ以上の荷物がある場合は追加料金を払って積んでもらう。
発券してもらったら、待合所に座って待つ。
トイレは会社ごとに奥のほうにあるけれど、現地人仕様なので紙はない。ヤンゴン市内のホテルやレストランでは経験できないタイプのトイレなので、初めてだとちょっと面食らうだろう。トイレへ行くときは荷物を置いて行くことになるのでカウンターの人に見てもらうといい。いまのところ、ミャンマーは荷物から手を離したら即持ち去られるという国ではないので、パスポートと財布だけをトイレに持っていけばいいだろう。
私が乗ったのは9時発の便。出発はほぼ定刻どおり。
ヤンゴンからカレン州までは6~7時間のバス旅だ。
このときはヤンゴン在住のミャンマー人に早い段階でバスの席まで予約をしてもらったので一番前の特等席だった。運転手の直後が特等席になるが、もしお坊さんが乗車してきた場合は譲らなければならない。カウンターにあるバスの座席表を見ると性別が「男、女、僧侶」の3種類になっているのがいかにもミャンマーらしい。
バスの運転席の周りにはパゴダやお坊さんの写真がべたべたと貼られている。一番右側のお坊さんは、カレン州の名僧、故ターマニャ僧正だ。
バスの座席はこんな感じ。3列でリクライニング、フットレストもあり、座席ごとに液晶パネルやUSBコンセントもあるという仕様。
正直、私が家から成田まで利用している高速バスよりはるかに上質。しかも成田行きのバスはいまだに電話で予約しているという体たらく。日本ってほんとダメな国になったと感じてしまう。
乗車してから3時間ほどで、中間点のチャイトー郊外でお昼休憩が入る。
チャイトーはゴールデンロックの登山口の大きな町だが、ドライブインは町から数キロ離れた郊外だ。バスがとまるドライブインはBELLAYレストランの場合が多い。ときどき他の他の店と提携することもあるが、長くは続いたことがなく、ほぼBELLAYレストランが定番になっている。
停車時間は30分程度。その間、バスは保安のために施錠されるので強制的にバスから降ろされる。
このとき同じようなバスがたくさん並ぶので、自分のバスがわからなくなる。スマホで自分のバスの写真を撮っておくとよい。
バスから降りるとほとんどの人がトイレに直行する。
トイレは数も多く、比較的清潔なので、日本人が利用しても戸惑うことはない。
トイレが終わったらすぐに食堂の席を確保して、昼食を注文しよう。
と、言ってもメニューはこんな感じなのでさっぱりわからない。
働いている若いミャンマー人は簡単な英語ならわかる子が多いので、英語で注文すればいい。
このレストランは飲茶と、ミャンマー料理しかない。
こちらがミャンマー料理「ヒン」。油で煮たカレー類である。
もし心配なら先に自分の眼で料理をチェックしてもいいかもしれない。
私がここでいつも食べるのはこの手前のエビとトマトのカレー。たぶんこの店のカレーの中では高級な部類だ。ミャンマーのエビカレーは小エビ(
定番は、ブタ、鶏、ヤギのカレーで、オススメはヤギ。
カレーを注文すると、カレールー、ご飯、スープ、トッピング、野菜の盛り合わせがセットになっている。
料金は300円程度。
カレーのルーは小さめに見えるけれど、ご飯一杯を食べるのにはちょうどよい量。物足りなければ2種類のルーを注文してもいいだろう。
野菜はけっこう生々しい。火が通っているのは右側の四角豆くらい。日本人は慣れるまでは火が通ったものだけにしておいたほうがいい。
私は食べるけれど。まだ移動があるので、食べたあとすぐ正露丸を飲むようにしている。
カレーの食べ方だが、カレーの具をご飯の上に載せ、カレーのルーの液体(ほぼ油)もご飯の上に垂らして味付けする。
プラウンカレーは薄味なので、トッピングの漬物や納豆をさらに載せて味を調節。
それをかき混ぜながら食べる。
食器の使い方は右手にスプーン、左手にフォーク。スプーンはナイフのように肉を切るのにも使い、ご飯を口に運ぶのにも使う。
この店のカレー類は味付けも日本人に合っているし、ボリュームもあるので私は楽しみにしている。
食事が終わったらテーブルで会計する。ウエイターが近くを通ったら「シンメ」と声をかければいい。
食事を終えてバスに戻ってみたら、まだドアがしまっていたのでしばし買い物。
ドライフルーツや揚げ菓子など、ほとんどが50円程度。
コオロギの唐揚げ。
後に見えるのはランブータン。いまは雨季なので果物が豊富だ。ランブータンはバスの中で食べるにはちょっと面倒なので手土産用か。
バスのドアが開くのを待っている人々。
さてここからは後半の移動。
まだ先は長い。
もし昼食に食べたものなどでお腹の調子が悪くなった場合は、運転席の近くにいる車掌に言えばいい。車内にはトイレはなく、街道にあるレストランなどに停めてくれるのでそこでトイレを借りる。たぶん英語は通じないから、お腹をさするジェスチャーをしながら「エインダァ(トイレ)」といえばわかってくれる。
チャイトーのドライブインから3時間程度で、カレン州の州都パアン市に到着する。
路線の終点であるパアンのバスターミナルは郊外にあるので、バスターミナルまで乗車せずに、途中の時計塔前バス停で降りるとよい。
ほとんどの乗客がここで降りるので間違うことはない。
ゲストハウスやホテルによっては、途中で降りたほうが近い場合もあるが、ホテルまで500m以上歩くなら、無理に最寄りバス停で降りずに時計塔前で下りてタクシーを探したほうがいい。このバス停が一番タクシーを捕まえやすいからだ。
9時にヤンゴンを出て、パアンに到着したのは15時。
帰路のバスのチケットは時計塔の前にあるこの黄色い看板の店で発券できる。
看板を見る限りでは、パアンから出るバスは、上り方面がヤンゴン、マンダレー、カロー、インレー湖、パテイン、タウングー、ネピドー、バガン、下り方面がミャワディ、ラインブエ、ダウェー行きがあるようだ。
15時に到着してホテルにチェックインしてひと息ついたら、もう夕方になる。
到着初日はあまり寺巡りなどはできないので、夕方から夜のお楽しみにはバットケーブにコウモリの群れを見に行くか、2箇所ある夜市に行くのがオススメのコースだ。
(2019年06月23日訪問)