レーケー僧院

ヤーペン村の森の中にあるレーケー寺院。

(ミャンマーカレン州ラインブエ)

カレン州でどこに出かけるかは、もっぱら GoogleMaps の衛星写真に頼っている。パアン市周辺の衛星写真を目視で精査して、お寺や洞窟候補の場所を探しているのだ。同じ場所を重複して目視しなくていいように、チェックが終わった場所にはフラグを立てていくのだが、その候補地は3,000ヶ所以上になっている。

これから紹介するのはその候補地の中でも、特に確認すべき優先度の高い場所である。それが次の写真の矢印の地点。

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「おお!これは行かなくてはっ!!」

って思う日本人が、私以外にいるのだろうか、、、いないだろうな。

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最大にズームしたのがこの画像。中央に3×3のドットのようなものが見える。これがきょうここまで出かけてきた発端となった物件である。

ずっと探してきた、レーケー(Leke)という宗派のパゴダではないかと思われる。

このくらい細かく衛生画像を見ているのだ。そうでなければ屋根付橋のような小さなものは見つけられない。

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村へ向かう道はさらに細くなり、ほとんど人通りはない。周囲は水田地帯。

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雨季の天水で田んぼに水が入り、田植えの準備が進んでいた。

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村の名前はヤーペン村というらしい。

目的のお寺は森の中。

スマートフォンで常時地図を確認できるので、迷いなく進める。こんな村でも携帯電話の電波が届くようになったのだ。この数年のミャンマーの進歩ってすごい。

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山門に到着。

やっぱりレーケーのお寺だよ! 間違いない!

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その根拠が、この扁額に書かれた文字。

この魔術的な雰囲気の文字はレーケー文字といって、カレン語を表音するために考案された文字のひとつなのだ。主にレーケーという新興宗教の信徒たちのあいだで使われている。

レーケーは1860年ごろに発生したといわれていて、新興宗教と言ってもそれなりに歴史がある。日本でいうと天理教くらいの感覚か。

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境内に入ってみる。

僧房へ行ってみたが、中は無人。お坊さんはどこかに出かけているようで留守だった。

主だった建物は、この僧房のほか、

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パゴダ拝殿とパゴダである。

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これがパゴダ。

レーケーの祭壇と呼ばれる型式のもので、中央の傘蓋のついた塔、それを囲む8本の尖塔、その外側に立つ三角形の針葉樹のような形のプレートが特徴である。

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もうひとつの特徴が、主塔と尖塔を結束する貫の上に動物が飾られていること。

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なんとも奇妙なパゴダである。

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確認できた動物は4体。

西のウマ(?)、東のゾウ、

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南にクジャク(?)、北にコブラである。

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そのほか、基壇の8方に祠がある。

八曜日の祠かもしれない。祠の中には仏像などはなく、花瓶に花が手向けられているだけだった。

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パゴダ拝殿に拝観させてもらおう。

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パゴダ拝殿はもしかすると船をイメージした建物なのかもしれない。

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パゴダ拝殿の入口。

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拝殿の内部。

奥の中央の通常であれば仏像が置かれるような場所には、献花台があるだけで堂内に仏像的なものは見当たらない。

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左側には小型のレーケー祭壇が2つ置かれていた。

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謎の五目並べみたいな曼茶羅。

天蓋に葉っぱが下がった意匠もレーケー祭壇の特徴である。

ん~何もかも興味深い。

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続いて僧房のほうへ行ってみる。

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僧房の内部。

中央はタイル敷きで、下屋部分はスコノの床。下屋にはテーブルが片づけられていた。

この場所以外にお坊さんの住居のようなものは見当たらないので、お坊さんはここで寝起きし食事をとるほか、信徒達への講義の場としても使っているのだろう。

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僧房も祭壇には花が飾られているだけで、仏像は見当たらない。

以前訪れているレーケーの本山と思われる寺にも仏像がなかったので、レーケーは仏像を置かない宗派なのかもしれない。

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銅鑼。

レーケー文字が書かれている。レーケー文字は画数が多く、漢字の払いみたいな画が見られるので、「鶏の足蹴り文字」とも呼ばれている。

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何らかの注意書き? レーケー文字のほか、ビルマ語との対訳が付けられている。

以前、職場にレーケーの信者の子がいて、僧院でレーケー文字を習得していたので、カレン州にはそれなりにレーケー文字を読める人口がいる。

カレン語を表記する文字は、このレーケー文字のほか何度か紹介しているミャインジーグー文字など、10種類近い文字が存在するという。

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境内の他の要素を見ていこう。

これは沐浴のための水をためる水槽か?

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鐘つき堂。

鐘つき柱は多くの場合露天に設置されるが、このようにお堂が付いているのは珍しい。

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これは倉か?

レーケーの本山にも似たような建物があった。もしかするとレーケー宗に特有の何かなのかも知れないので、心に留めておこう。

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倉と思われる建物の内部。

レーケーのお寺は、本山のほか4つの子院があるというような話を聞いたが、ついにその子院ひとつを発見することができた。今回のカレン州滞在で私にとっては最大の成果である。

いまも、ときどき衛星写真を眺めているが、ほかにはレーケーらしきお寺はまだ見つかっていない。

(2019年07月17日訪問)

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