ポンドウパゴダ

ナウタニェ丘陵にある地元民向け観光パゴダ。

(ミャンマーカレン州ラインブエ)

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ピタカ街道はナウタニェ丘陵という広大な丘陵地帯の北側を通っていく。

パアン周辺を衛星写真で見ると、辺鄙に見える場所にも道があって人の手が入っていることがわかる。道路から見ると雑木がどこまでも続く深い森に見える場所も、衛星写真で見るとパッチワーク状に植生が変化していて人工林だとわかるのだ。その多くはおそらくゴムの林でであったり薪炭林、あるいは焼畑の跡であろう。カレン州では家庭の炊事のエネルギーはいまだに薪炭が主流だし、パアン周辺に多い石灰工場の石灰窯は大量の薪を必要とする。そのため平坦地のほとんどが人工林か二次林なのだ。

だが、衛星写真でこのナウタニェ丘陵地帯を見るとパッチワーク模様が見えず、ひたすら均質に見える森林が広がっている。この丘陵の面積は品川区、目黒区、世田谷区を合わせたほどもあるが、衛星写真を見る限り道らしい道や人家はなく森林で覆われているのだ。この丘陵地帯は一体何なのだろう。

その森の中に白いパゴダが見えた。

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事前に衛星写真で調べたときには立ち寄る必要性もなさそうなパゴダに見えたのだが、大きな山門があったので寄っていくことにした。

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丘陵地帯までは3kmくらいの参道が続く。

少し青空が出てきた。天気がよくなりそうだ。

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途中に大きなT字路があって、ナッ神の祠があったので写真を撮っていたら、民兵っぽい男に呼び止められた。

実は、写真の右隅に写っている建物が何らかのセキュリティゲートで、そこの写真を撮ったつもりはないのだけど勘違いされたみたいだ。

お寺に参詣するつもりだと説明し解放されたが、ちょっと緊張した。武装した民兵じゃなかったのでまだマシだったけど。

そもそもこのセキュリティゲートが何のためにあるのかが謎なのだ。衛星写真を見るとどうもこの先に道路を建設中らしいが、別に軍事施設などがあるという様子でもないのだ。

実は以前にズェガビン山中の道路工事現場で写真を撮ったら、小銃を持った民兵みたいな人に制止されたことがあった。そのときはお寺を建てているように見えたので写真を撮っていたのだけど、どうやら新道の建設現場はデリケートな場所みたいなので注意したい。

カレン州では「道路を造る = 有事の際に中央政府軍の進軍に利用される」という側面があり、山岳地帯の道路の整備について KNU は協力的ではないし、地図も間違っていることが多い。意図的に間違えてあるのじゃないかと思う。いまは GoogleMaps で誰でも衛星写真を見られるから、道路建設は機密にはできないと思うんだけれど、現場の規則は規則なんだろう。

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気を取り直してパゴダへ向かう。

白い九輪部分が見えてきた。道は合っている。

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参道の途中に橋があった。

この橋から川を見下ろしてびっくり。

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山から流れ出る水なのだろう。ものすごく澄んで綺麗な水が、惜しげもなく流れている。

カレン州では湧水の泉を別とすれば、地表を流れている河川が澄んでいるというのはこれまで見たことがなかった。

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さっき訪れたノタリ山僧院でも川の水がそこそこ綺麗だったが、それもここと同じナウタニェ丘陵のすそ野だった。

こんな山水がナウタニェ丘陵の周辺にはたくさんあるのだろうか。こんな綺麗な川がもし乾季にも枯れないのだとしたら、それだけでも見に来たいくらいだ。

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ほどなくお寺に到着。

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意外なことにお寺は仲見世があるくらいにぎわっていて、けっこう参拝客も来ていた。

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仲見世は6軒くらいある。

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駄菓子もいろいろ売っているので、お腹の心配をせず何かを口に入れることもできるし、冷蔵庫があるから冷たい飲み物も手に入る。

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山門が見えた。

山門から先は石段が続いていて、回廊になっている。

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階段がどのくらいあるのかわからないから、まずこのお店でノドを潤していくことにしよう。

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このお店に入った決め手は、お土産品が充実していたから。

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数珠や仏陀の3Dポスター、キーホルダーなど、お寺の門前町らしいすばらしいラインナップ。

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何かお土産を買おうかなと真剣に思わせる品揃えだった。

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お店でパゴダの名前を教えてもらう。

「願いのかなうポンドウ大仏塔」というような名前らしい。記事のタイトルは「ポンドウパゴダ」でいいかな。

ではお参りしよう。

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石段にはずっと屋根があるので、山門のところでサンダルを脱いでいってもいいけど、ミャンマー人たちもみなサンダル履きのまま登って行くので私もそうさせてもらった。この先まだ岩場を登るような場所もあるかもしれないしね。

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石段の横は岩盤が露出している。この丘陵は全体が岩の固まりなのかも知れない。

水が流れているが、お寺の炊事の排水が混じっているのでお世辞にも綺麗とは言えない。

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岩場には椰子が生えていて、これは庭なのだろう。

ミャンマー的にはお寺の美しい庭園ということになる。

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苔むしていたり、名も知らぬ綺麗な花も咲いていて、たぶんそれなりに手入れをしているのだろう。

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しばらく登ると僧房があった。

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ここは観光パゴダであると同時に、修行僧のいる僧院でもあるのだ。

当サイトでは「○○パゴダ」と名前を付けているときは「仏塔が参拝の中心となっているお寺」という意味であり、運営している主体が僧院なのか、住職だけのお寺なのか、無人の仏塔なのかは区別していない。

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僧房の反対側には水垢離場がある。

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水はどこからか酌んできているというのではなく、蛇口をひねればポンプ式の井戸水が出るようになっている。

水はすごく綺麗。

ここはお寺を建てるにはいい場所なのだな。

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僧房を過ぎると、右側に動物を飼っている小屋があった。

行ってみると中に飼われていたのは、、、

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クマだ!

マレーグマだろうか。大型犬くらいの大きさだ。

檻の間隔は25cmくらいあって、クマが手を伸ばしてくるくらい空いている。引っ掻かれでもしたら、こっちは肉まで出るんだろうな。

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このクマがどこから来たのかだけど、もしかしたらこのお寺の裏山であるナウタニェ丘陵に生息しているんじゃないだろうか。親からはぐれてお寺に迷い込んできたとか。そんな気がしてならない。

ミャンマー南部の山岳地帯には今でも野生のトラやゾウやクマもいるのだが、遠くのジャングルで捕獲したクマをわざわざこのお寺に運んできたとは考えにくい。

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クマの檻の反対側には信徒食堂がある。

参詣に来ていた若い子たちが食事をしている。

ミャンマーのお寺では、お寺が参詣者に無料の食事を提供する。もちろん私のような外国人であってもだ。私はきょうはまだ先のある旅だから、お腹のリスクを考えたらいただかないけれど。

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ここはセルフサービス方式だった。けっこう盛ってるな。

お寺でご飯をいただくことは、淨化された食物を体に取り込む宗教儀式というようなことではなく、単純に楽しみなのではないかと思う。ミャンマー田舎の若い子はご飯が好きなのだ。

「お寺に行ったら楽しかった」という体験がこの国の仏教の未来を支えているのかもしれない。

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さらに石段は続く。

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石段の途中にヤギがとうせんぼしてる!

お寺で飼っているとも思えないので、近くの人家から散歩にでも来たのだろうか。

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大きな講堂があった。

修行僧が勉学をする場所と思われる。

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ちょっと覗かせてもらおう。

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内部はこんな感じ。

食事が終わったあとのようだった。

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階段を上り詰めた。いよいよ山頂だ。

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山頂は完全にタイル敷きになっているので、ここからは履物を脱いでいく。

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遠くから九輪が見えたイメージと違って、思ったより大きくない。

主パゴダの途中から子パゴダが生えているという複雑な作りのパゴダだった。

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タコンタイは複雑。

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タコンタイのてっぺんには蓮の花の中で祈りをささげる人。

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菩提樹は根元を完全にコンクリで固められている。

これでよく枯れないな。

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左側の鐘、増槽タンクを半分に切ったものだよね?

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地下へ下りる石段があった。

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パゴダの周りは懸崖造になっていて、階段はその下へ続いていた。

どうやらお寺の裏口になっているようだった。

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得度堂と井戸。

こんな山頂に井戸があるなんて。

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ちゃんと水はあった。

水が豊富な丘陵なのだな。

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ナッ神の祠。

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中に祀られていたのはタイネンシンかな?

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パゴダのあるバルコニーから見たナウタニェ丘陵の森。

これからこの地平線のほうへ行くのだ。

(2019年07月20日訪問)