光明寺・家浦八幡神社

境内には極上の蘭塔がいくつも並んでいる。

(香川県土庄町豊島家浦)

豊島(てしま)に上陸したものの、情報もあまりなくどこで何をするかはまったく決まっていなかった。頼りは1/25,000地形図とフェリー乗り場に置いてあったコピー刷りの島内観光マップだけである。

いま時刻は9:30。唐櫃港から小豆島行きのカーフェリーは14:40出港なので、それまで観光マップに書かれている場所を見てまわることにしよう。

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まず最初に向かったのは、家浦集落の南のはずれにある光明寺というお寺。

途中の田園風景。

ちょっと排水の悪そうな田んぼ。

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まあ、どうという事はない田舎の家並みを抜けて寺を目指す。

やがて最初の目的地、光明寺の入口が見えてきた。

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よく見ると、、、ある、ある、ある!

今回の訪島の目的のひとつ、蘭塔(らんとう)(矢印)がいくつも目に付いた。こりゃ、幸先(さいさき)がいい。

蘭塔とは小豆島界隈で多く見られる墓石の形態である。丸い外観の物が多いので「卵塔」の字を当てるとも言う。当サイトでは無縫塔との誤解を避けるため「蘭塔」と表記している。

連想される言葉として全国的に使われる「ラントウバ(=墓地)」がある。江戸初期には「卵塔場」の字が当てられた書物があるが、中世の墓石(あえて言えば五輪塔?)が卵の形状をしているわけではないので、本当の語源ははっきりしない。いずれにしても「ラントウ=墓」の意味は全国的なものだ。

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小豆島界隈のラントウについて言えば、「卵」の語感から丸い墓石の形状に気を取られすぎないように注意する必要がある。

たとえばコレが蘭塔の候補なのだ。

他の地域だったら屋敷神かなと思って見過ごしてしまいそうな石造物だが、おそらくこれは墓石。

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寺の石段の右側にあった蘭塔。

まさに卵の文字が超絶に似合う形状。

格子戸ふうに刳り貫かれた細工がすごい。

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石段の左側にあった蘭塔。

新潟のほうにある「猫ちぐら」っていう民具を思い出すよね。

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内部には舟形光背の像が収納されていた。これは石仏ではない。江戸以前に流行した墓石の形態なのだ。

このように石で出来た家の中に、僧形の石像等が収められているものを、当サイトでは祠内仏・石祠墓と分類していて、小豆島の蘭塔もその範疇で扱うつもりだ。

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寺の境内へ進もう。

山門は一間一戸鐘楼門。

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門の正面には方丈ふうの建物。その左側に玄関、さらに左側に庫裏がある。

豊島には西国三十三番の写し霊場があって、この寺はその10番、11番札所になっている。

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方丈の右側には宝形の建物。これが本堂なのかな。

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その本堂の前にあった石造物。

これも蘭塔であろう。

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方丈の右側へ行くと本堂があり、そこからさらにまた右のほうへ石畳が続いている。

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その石畳を辿ると、家浦八幡神社という神社があった。

鎮守社というにはちょっと立派すぎる。神仏習合の寺が、分離しないまま今日に至ったものじゃないか。

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この八幡神社の屋根には謎の生き物が載っている。

鳥かなあ?

そして、神社の横には、、、、

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うひょ~~~~~ すっ すごすぎない?

最初のお寺ですでに胃もたれしてきそうな勢いなんだけど?

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開口部の格子デザインのバリエーションがすごい。虚無僧のかぶり物みたいな独特の形状の蘭塔の団地だ。

うん。フェリー料金高かったけど、豊島、来てよかった!

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ついでに、お寺で見かけたカタツムリたち。

わたしはカタツムリのことはまったくわからないのだけれど、この旅で多く見かけた気がする。写真を撮っておけば、いつか何か気付くこともあるかもしれない。

これは触覚が長めの種類なのか、それともがんばって伸ばしているだけなのか。

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殻が少し高めの種類。

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キセルガイの一種。

(2008年10月11日訪問)

今こそ行きたい日本の神社200選 (TJMOOK)

ムック – 2022/7/26
島田 裕巳 (監修)
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