清井製材の製材水車

製材機械を動かす動力として使われた水車。

(徳島県上勝町福原平間)

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上勝町の温泉施設「月ケ谷温泉」から勝浦川の支流を少しさかのぼったところに清井製材という製材所がある。

この製材所を川の対岸から見ると、建物と建物の間に大きな水輪が見える。製材水車だ。

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現在は水車は使われていないようだが、雨風が当たりにくい場所に設置されているためか非常によい状態で残っている。偶然この水車を発見したときは本当に興奮した。使われていないとはいえ、これまで水車の写真集などで紹介されたことがない非観光の実用水車だからだ。

製材水車という岡山の共和林業の水車が著名で現在も保守されているが、それ以外は残っているのを聞いたことがない。だがこのように知られていない製材所があったということは、丹念に探したら国内にはまだ製材水車が見つけられるのではないか、そういう望みが湧いてくる。

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見たところ軸は鉄製。左側の波板張りの部屋の中に引き込まれて、ノコギリなどの動力として利用されていたのだろう。

水車の特長として、低速で極めてトルクが大きいことがあり、エネルギーを取り出しやすいというのがある。かつては製材所にかぎらず、多くの工場で水車が利用された。前橋市で製糸工場を探したときも、工場のために計画的に張り巡らされた水路にそって製糸工場が並んでいた。

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お願いして近くで水輪の写真を撮らせてもらった。

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本来は水車ではなく、製材所としての仕事ぶりを見せてもらいたいところだが、きょうはもう時間が遅かった。

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水輪への導水は中掛け、つまり中間くらいの位置に水を掛けている。

導水路は確認できなかったが、鉄製の樋で定量の水を安定して掛けられるのだろう。

闇雲に上掛けしなくても十分なエネルギーが得られるのだ。

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敷地に水車の搗き臼がころがっていた。

製材水車だけでなく、精米ができる水車小屋が近くにあった証しだ。

(2005年04月24日訪問)

日本初水車の作り方の本 (小学館文庫 G よ- 2-1)

文庫 – 2000/7/1
吉田 燿子 (著)
富山県城端町の水車大工による懇切丁寧な解説をもとに、水車のしくみと作り方を詳しく図解。

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