水車の里から道なりに高度を上げてゆくと口山集落の西谷地区に出る。水車の里がある渕名は谷底の空がないような場所だが、口山集落まで登ると一気に視界が開け、そこは遠くの山並みまで見渡せる日当たりのよい土地だった。
このとき初めて口山を訪れたが、県西のソラの集落の雄大な風景にしばし圧倒されてしまった。
口山集落にはこのあと阿波葉農家の仕事を見るために足しげく通うことになるのだが、そんなことはこのときまだ夢想だにしていない。
そのまま村を周回する道を走っていくと、屋根に九輪を載せた茶堂があった。
西渕十三仏霊場の6番「伊乃瀧堂」だ。
「猪滝堂」という漢字もあるようだ。
本尊は弥勒菩薩。
堂の横には小さな滝がある。
これが「伊乃滝」なのだろう。
水盤舎にはたくさんの手ぬぐいが掛けられている。何か意味がありそう。滝で水垢離でもするのかな。
横の板碑は道路からみて裏側に銘があって、「奉唱光明真言百萬偏寶蚕」と書かれているようだ。
滝の反対側にはエキゾチックな茶堂がある。当サイトでは他の地域との共通化から「茶堂」と記しているが、徳島県では「四ツ堂」という言い方が一般的。平面が正方形で吹き放ち、4本の柱だけで建っているというような意味で四ツ堂と呼んだのだろう。
一般的には本尊としては弘法大師が祀られる。
屋根には蕨手や九輪が付いているし、屋根の鉄板の菱葺きが竜宮世界のような雰囲気だ。
堂内に掛けられていた歌の色紙。4番の歌詞がいい。
歌でお頼みいたします 西渕地域の皆さんや
此々を往来する人の 交通安全家運長久
作者は新水貞雄とある。葉タバコ農家の新水家でも似たような色紙を見かけたが、ご主人の名前は確か勝邦さんだったと思うので別人の作品だろう。
(2006年12月17日訪問)