禄存星宮殿

ラッキー宮殿のひとつ、石でできた水車。

(徳島県美馬市穴吹町口山渕名)

現在日本の郵便番号は7桁だが、平成10年(1998)以前は3桁+2桁の補助番号だった。補助番号の2桁は地方の郵便局の番号として使われたので、一般の住所は3桁で表されていた。ここ穴吹町は3桁の郵便番号で「777」が割り当てられていて、それをラッキーナンバーとして町おこしに利用しようとした。

それが現在も残る「ラッキー宮殿」である。町内に北斗七星の形にパワースポットを配置し、平成7年から7年間かけて7つのオブジェを建設したのである。お寺でも神社でもなく「宮殿」なのは、おそらく公金を使ったため特定の宗教と結びつけることができなかったからだと思われる。

水車の里にはそのラッキー宮殿のひとつ「禄存星(ろくぞんせい)宮殿」がある。

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これは何なのだろう、巨大なレンコン? いや、水を掛けているのでたぶん水車の水輪なのだろうな。石で出来た水車。当然回転することはない。

案内板には次のような説明がある。

「ここ渕名地区の人たちは、昔から自分たちの生活を助けてきた湧き出る水に感謝し、自然の恵みを動物とも分かち合い暮らしてきたのです。このすばらしい人と自然の営みが永遠に続くようにと願い、ここ渕名谷にラッキー宮殿として禄存星宮殿を建設します。 平成12年7月7日穴吹町商工会青年部」

う~ん、なんか日和った説明だ。そもそも山里の人にとって動物って畑を荒らす害獣でしかなくて恵みを分かち合うって気持ちじゃないと思うんだが。

ラッキー宮殿って結構思い切った企画で面白いと思うので、もっと中二病的なストーリーを作ったほうがよかったのじゃないかな。たとえば、「これは全世界にいる7人の勇者を発見するため前世の記憶を呼び覚ます古代コンピューターです」だとか、「邪馬台国滅亡の原因となった最終兵器のタキオン加速器が1万年前の地層から発掘されました」だとかさ。

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案内板には民話のようなものも書かれていた。

渇水のときの水汲みで、遅く行くと水が汲み難いので夜明け前に水汲みにいったところ、水神の大蛇が水を飲んでいて逃げ帰ったというような話。人より早く水汲みをするのはよくない、というような話。

冴えない民話だなぁ。

(2006年12月17日訪問)

死者の結婚 (法蔵館文庫)

文庫 – 2024/9/13
櫻井義秀 (著)
「結婚」とは何か。山形県のムカサリ絵馬供養、青森県の花嫁人形奉納、沖縄のグソー・ヌ・ニービチ、韓国や中国・台湾の死霊婚など、死者に対する結婚儀礼の種々の類型を事例に、その社会構造や文化動態の観点から考察する。

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