土佐町農協稚蚕人工飼料育施設

おそらくロータリー式の飼育所だったろう。

(高知県土佐町土居)

土佐町における国道439号線はよく整備されていてスピードも出がちだ。国道439をこのまま西進すれば深い山を抜けて四国の西のはずれ、八幡浜や宇和島方面まで行くことができる。でもきょうは早明浦ダムから吉野川の源流部に分け入って、そのまま北進して瀬戸内の西条市方面へ抜けるつもりだ。

ただあまりにも道路が快適なので勢いあまって早明浦ダムの入口を過ぎてしまった。でも問題ない。土佐町役場のところからもダム湖へ通じるトンネル道があってまだリカバーは可能なのだ。早明浦ダムのダムサイトは見られなくなるけれどね。

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土佐町役場の前を通って、トンネル道へ向かおうとしたところ、看過できないものを発見!

稚蚕飼育所だ。道を間違ってよかった!

このころ私は群馬県の稚蚕飼育所巡りに着手していた。「稚蚕飼育所を観察するぞ」と明確な意志をもって最初の飼育所を訪ねてから3ヶ月が過ぎ、これまでに40ヶ所ほどの稚蚕飼育所を見てきた。そこで培った眼力がなければ素通りしていたかもしれない。

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これは土佐町農協が運営していた稚蚕飼育所で、蚕を桑ではなくて人工飼料で飼育するタイプの施設だ。

ただ、土佐町にいま養蚕農家が残っているとしてもその数はわずかだろうから、現在も施設がいまでも稼働しているかはわからない。駐車場はちゃんと除草されていてきれいになっているから廃虚という感じではない。

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建物の西側は機械室になっている。

人工飼料による飼育では、蚕に餌を与え続けるだけで、食べ残しや糞を回収しないから、減菌されたクリーンルームで飼育しなければならない。通常の農家の蚕室のような環境では餌がカビたり腐ったりするからだ。そのための空調設備の機械室である。

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中央部分のアルミドアは配蚕口であろう。

飼育した稚蚕を養蚕農家に出荷するための専用のドアになる。

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作業者の入口。

建て増しされたような部分は用具倉庫ではないか。

事務室や作業者の休憩室はたぶん建物の中の衛生的な場所にあると思われる。

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空調の室外機。

う~ん、使ってないかな。

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機械室を覗いて見たら、緑色の金属製蚕箔が見えた。

ということは、ロータリー式の機械化蚕座があるのだろう。推定だけど、2000万匹(そこそこの規模の養蚕農家数百戸)の蚕を供給できる施設だったのではないか。

ストリートビューを見ると、2014年ごろまでにはこの飼育所は取り壊されてしまったようだ。

(2007年03月04日訪問)

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アクロス福岡 (著), アクロス福岡文化誌編纂委員会 (著)

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