多々羅の民家

多々羅川の氾濫を想定した民家。

(徳島県徳島市勝占町多々羅)

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多々羅川下流は生きものがたくさん見られる田園地帯だが、川が自然のままということは治水の面では氾濫の危険と隣り合わせということでもある。

熊山地区では河川改修が進み、堤防が築かれてはいるがこの看板のように氾濫が前提とした場所もある。

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家々を見ていても、田んぼからは1mくらいは高くなっているので川が氾濫しても家は大丈夫なように微高地に建てられている。

先ほども見たが、ここにも切妻の二階屋がある。こうして見ると、吉野川氾濫原で私が勝手に「出釜造(だしがまづく)り」と呼んでいる藍作農家の主屋と似ている。

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立派な石垣で囲まれた家もあった。

この家も元農家と思われ、切妻の二階屋。この地域の農家の特徴的な造りのようだ。

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多くの家々は山ぎわの少し高い場所に集まっている。

手前は水田だが、かつてはこんな谷あいの水田の多くが、湿田や沼田だった。

土地改良された現代では想像もできないが、稲刈りのときに小舟で稲穂を運び出すような田んぼだったのだ。

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この農家も2階建てなのか?

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2階の採光が少なく、中国地方に多い「居蔵造(いぐらづく)り」民家のようでもある。居蔵造りは実質的には平屋と同じで2階部分は利用しない。

こうした2階が狭い民家は、もと寄棟造の草屋根を瓦に葺き替えたときに天井裏を2階にした結果ではないかと私は考えている。

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この黒い屋根は徳島の古典的な農家の形式「四方蓋造(しほうぶたづく)り」の民家。

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草屋根をそのままに鉄板を被せたものだが、こうした民家が改築されて、先ほどのような採光のない2階ができたのではないか。

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この地区でよく目立つお屋敷。

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小さな丘陵をまるごと敷地にした豪農だ。

こちらも切妻の瓦葺き二階屋。

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塀は大きな石組みの上に、小さな扁平な石を積み上げた築地塀。

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このお屋敷の丘陵を裏側から見たところ。

どんな洪水でもこの家だけはびくともしないだろう。

(2007年10月14日訪問)

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