祖谷渓温泉は行政区画的には池田町になるが、祖谷の秘境の宿という意味では西祖谷山村、東祖谷山村にも劣らないロケーションにある。いま、車で祖谷に入る方法はJR大歩危駅から県道45号線で峠越えすればあっという間だ。だが、祖谷温泉は祖谷川の先行谷がウネウネと曲がりくねって20kmほど続く難所の中間地点にあるから、かずら橋を訪れる観光客のほとんどはこの場所を通ることはない。
県道は祖谷川の急峻な崖の途中を通っていて、この区間には人がまったく住んでいない。かずら橋から見れば下流になるが、まさに秘境なのだ。
ホテル祖谷温泉は県道沿いの崖の上にあるが、その露天風呂は川面に近い場所にあり、ホテルからは170mの標高差がある。露天風呂へはケーブルカーで下ることができる。降りた先には風呂しかなく、入浴客は乗車無料。
この温泉は日帰り入浴が17時までと比較的利用可能時間が長く、私は何度も入浴している。2度、宿泊しようと思ったこともあるが、2回とも予約がとれなかった。
浴室は写真では紹介できないけれど、ここは私にとって県内ベストワンの温泉だ。泉質はアルカリ性単純硫黄泉、ぬる湯で泡付きがあり、最も好きなタイプのお湯。それが無加水、無加温、無消毒の掛け流し。しかも掛け流しの量が半端ではなく、ドバドバと湯船に注がれ、もったいないくらいにあふれ出てそのまま川に排水されている。
私は徳島県内の日帰り入浴可能な温泉はほとんど入ったと思うが、その中で泉質、湯量、景観ですべてにおいて圧倒的にお勧めできるのがここだ。
露天風呂付近からの風景。人の営みがいっさい見えない深い谷、両岸は人跡を阻む自然林。川面にはカワガラスなどの野鳥も観察できる。
唯一難点があるとすれば徳島の主要観光地である鳴門や徳島市内から遠いというところ。なので祖谷観光と組み合わせて訪れるのがいいだろう。
ホテルから県道を300m行ったところにある小便小僧の像。200mの絶壁から突き出した岩の上に置かれている。
県道の開削工事の際、ここで労働者が度胸試しをしたといわれている。
本当に絶壁なのでこの像の場所まで行くのにはかなりの勇気がいる。ハーネスを付けていたとしてもやだな。
(2010年08月02日訪問)