神山町でアートイベントがあり、寄居座という古い芝居小屋の内部が公開されるというので出かけてきた。
そのまま美郷村のほうを回って帰ろうと思い、焼山寺のある県道43号線を走っていたら、道から見える場所に索道があった。
谷の反対側にある柑橘畑から作物を搬出するための索道ではないかと思われる。
索道は3基ある。
写真は重なってしまってごちゃごちゃしているが、元柱が3本立っているところから目で辿ればわかりやすい。索道や搬器自体はこれまでも紹介してきたものと大差なく、複線の往復式索道だ。
だが、ここで注目すべきは最も手前にある元柱。これ、トバシだ。主索しかなく、荷物は架線の傾斜を使って滑走させるという原始的な単線式索道である。
しかも地面をよくみたら、チキリ(滑車)が転がっていた。架線から外せるようにフレームに切り欠きがある。
トバシには曳索がなく山の上からチキリを滑り降ろすだけだから、チキリを山上に戻すことができない。そのためチキリは大量に用意しておき、滑走が終わったら外して溜めておき、まとめて山上に運んだという。たぶん2基をセットで使うものと思われるが1基しか見つからなかった。
でも油が塗ってあるし、もしかして今も使っている?
さらに驚愕すべきものがあった。
木のチキリが掛けてあったのだ。ごく初期の索道では鉄線に油を塗布しこのような鉤状の木を引っ掛けて貨物を滑走させた。たぶんそれを再現したものだと思う。
でもなぜこんなものが? ここで林業組合が索道技術研修でもやったのか?
元柱の主索の取り付けかたを見てみよう。
真新しいワイヤークリップが付けられているので、ごく最近ここで仕事をした人がいたのは間違いない。
屋那瀬のトバシではガードレールに架線が巻かれていたけれど、こちらが本来の姿だ。とても良いものを見せてもらった。
(2008年10月26日訪問)