一丁田の飛石

小畔川にある飛石のひとつ。非観光の実用飛石かもしれない。

(埼玉県川越市笠幡)

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かほく運動公園の飛石から上流へ1kmほど移動。関越自動車道が小畔川(こあぜがわ)をまたいでいる場所まで来た。

もうこのあたりは公園からも団地からも少し距離があり、周囲は雑木林と農地ばかりだ。

実はきょう最も見たかった場所がここなのだ。

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ここで小畔川に南小畔川という支流が合流する。南小畔川は支流と言っても、本流と同じくらいの長い上流域を持つ川で、源流は飯能市街にまでさかのぼる。

この支流の合流点に飛石があるのだが、これがどうも公園とか観光施設とは無縁の、地域の利用のために設置された実用飛石ではないかと思われる物件なのだ。

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これまで埼玉県でいくつも飛石を紹介してきているが、すべて行政が親水公園の施設として設置したものだった。有り体に言えば児童公園の遊具みたいなものだ。

だが私が本当に見たいのは、地元の人のみが利用する実用の飛石だ。本来なら沈下橋や抜水橋が欲しいのに、利用者が少なかったり、道路と接続していないために橋が造れない場所に、既得権的に残った河川横断構造物としての飛石が見たいのだ。

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これまで当サイトでは非観光の実用飛石と思われるものは小豆島で見た1件だけだった。ここが2件目と言っていいのではないか。

この合流地は戦時中に銃弾を製造していた火薬工場の敷地で、いまだに陰気で近寄りがたい雰囲気が抜けていない場所なのだ。こんなところに市民や子どもが遊ぶための飛石など設置されるはずがない。

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南小畔川と小畔川本流の合流地付近はもともとは蛇行していたのを1970年ごろ改修して流路が直線化された。そのときこの場所に地域で利用中の私設橋あるいは飛石があり、改修工事後に簡易的な飛石として残されたのではないだろうか。

土手から飛石まではわずかな踏み分け道がある。

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だが残念なことに飛石は損壊していて渡れそうになかった。

2019年の台風19号で壊れたか。

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壊れた石が1つくらいなら無理やり渡れたかもしれないが、さすがにこれは渡れない。

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支流側の飛石は健在で、いまでも渡れそう。

来たタイミングが悪かった。もう少し時間を置いて来たら修理されているかもしれない。あるいは逆に利用者が高齢化で利用しなくなったりで、本格的に撤去されるかもしれないが。

10年くらいしたらまた来てみよう。

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合流点から下流を見た様子。

(2023年03月29日訪問)