大船渡市から再び海岸線の南下を始める。大船渡市より北側の海岸線(つまり昨日訪れた釜石から大船渡まで)は飛ばすことになるが、しかたあるまい。またいつか来ることもあるだろう。旅も4日目で少し疲れてきたので当初予定していた宮城県の海岸沿いの探訪をあきらめて、三陸海岸における岩手県南端の街、陸前高田まで見て引き上げる決心をする。
普門寺は、大船渡から陸前高田の市境を越えてすぐに東西に走る農免道路を入った氷上山の中腹にある。この地方きっての名刹と言っていいだろう。
農免道路に面したところに駒寄せがあり、そこからは長い参道が伸びている。
途中には四脚門がある。
四脚門を過ぎると参道は上り坂になっていて、老杉の並木が続く。名刹にふさわしい参道の雰囲気だ。
本堂や他の堂塔がどうであれ、参道の雰囲気がいい寺というのはやはり印象深いものだ。たまに、参道だけ良くて本堂は大したことない寺もあるが、それでも参道が良ければ比較的よい印象が残る。
杉並木を進んだ場所にも門の跡がある(写真の中央の平地)。かつて楼門があったのではないかと思われる。
本堂は9間。向拝の彫刻や香狭間が目立つちょっとごちゃごちゃした建物だ。
本堂の右側には庫裏、鐘堂。
本堂の左側には渡り廊下でつながった衆寮がある。1階部分は十王堂になっている。
そして、本堂と衆寮の間から裏に廻ると、庭園があり小さな三重塔が見える。
この三重塔は九輪の先端まで12.5mしかないという小さな塔である。江戸後期(1809年)に建てられたもので県指定有形文化財ということだが、ほとんどの部材が後補でとても新しく見える。
初層からして1間四方しかない上に、各階の逓減率(平面が狭くなっていく比率)が異常に高い。3階の部分に行くと平面は50cm四方くらいしかなく、建築物というよりほとんどプラモデルのような感じだ。材が新しいからよけいにそんな感じがする。
垂木は3層は扇垂木、1層は2軒(ふたのき)の並行繁垂木だ。ここまでは一般的なのだが、2層には垂木がなく彫刻が充填されている。こういう軒の処理はたまにあるが好きではない。
三重塔の横には蔵があって、その手前に仁王像が納められていた。想像するに、失われた楼門に置かれていた仁王ではないかと思う。
また、三重塔と本堂のあいだには大仏がある。高さは4mほどか。
白木の鳥居をくぐってお参りするようになっている。
大仏の後ろ姿。
この普門寺はたしかに名刹なのだろうが、変な三重塔や大仏などがあり、心穏やかに参詣できない寺だった。
(2000年10月07日訪問)