千仏洞。耕三寺の境内にある地下霊場だ。

総延長は350m。1961年から着工し、完成まで3年を要した大工事だったという。

入口は本堂の右手、多宝塔のある丘にある。

内部は富士山と浅間山から運んだ溶岩が積み上げてある。この手の地下霊場としてはかなり立派な作りだといっていい。

堂内に入ると少しひんやりしているが、この日は観光客が多く行列しての地獄極楽めぐりとなった。人、人、人で、写真を撮るのもたいへんだった。

洞内は「往生要集」を体感するための空間とされている。入口のあたりには閻魔大王がいた。

しかし、閻魔大王以外は鏝絵のようなものが並んでいるだけであり、地獄巡りとしてのインパクトは少ない。

観光客達も足早に通り過ぎていく。

しばらく進むと極楽ゾーンに入る。

洞の前半部は溶岩が貼り付けてあるとはいえ単調なトンネル状だったが、このあたりからは洞窟の形状も複雑になってくる。

前半は単調で「こんなものか」と思わせておいて、後半の複雑な空間で度肝を抜くという演出だろう。地下霊場をよく研究して作られているのがわかる。

さらに深部へ下りていく。最深部は地下15m。地下3階の深さになる。

高低差があるというのは、人口の洞窟としては画期的だ。

驚くべきことに内部には池や滝もある。

排水のことまで考えたら、大変な工事が必要だったはずだ。

極楽ゾーンには約千体の石仏があるという。

極楽ゾーン

ところどころ縦坑があり、見上げるように仏たちが積み上げられている。

まるで石仏で作られたウエディングケーキのような状態。

通路はクネクネと曲がって、縦坑部分には太鼓橋もある。

地下霊場としては申し分のない素晴らしい作りだ。

上の通路から下を通る人々をみたところ。

350mという長さはダテではなかった。

フェイクばかりの耕三寺において、この千仏洞の設計はオリジナリティもあり高く評価できる。国内の地下霊場では五本の指に入るだろう。

寺の入場料1,000円のうち、千仏洞の価値は500円分くらいあるのではないか。