猿沢の集落に西のはずれにあった寺。天台宗観福寺。
山門は三間一戸四脚門。その右側にはやけに直線的な袴腰鐘楼。
山門を入った正面には、岩の上に鎮座した四方懸崖造りの観音堂がある。
かなりいい雰囲気だ。たまたま立ち寄った寺にしては最高の見つけモノ。まさにセレンディピティーである。
この観音堂へ登る石段、横からみると石段ではなくて橋になっている。下部は池になっているのだ。
このような石橋は中国地方や九州にはありがちだが、関東以北ではほとんど見ることが出来ないとても珍しいもの。もし私が知らないでこの写真を見せられたら東北の寺とは思わないだろう。まるで西国の寺の風景のようだ。
内部は内陣と外陣が格子で区切られていて、いかにも密教の堂らしい雰囲気。
この観音堂は奥州三十三観音の二十七番札所になっている。
中に祀られているのは聖観音。
手前の金ぴかの聖観音は前仏か。でも後ろの方に本尊が見えちゃってるみたいなんですけど‥‥。
前仏というのは、本尊が秘仏などで見られないときに、参拝客を納得させるために見えるところに置いておく本尊の影武者みたいな仏像のこと。
観音堂から右のほうへは渡り廊下が続いている。
中央の切妻のところには鎮守社の金毘羅宮、階段を下りたところには赤い屋根の文殊堂がある。
本堂。本堂の前にはまわり場、右側には庫裏がある。
観音堂の裏山は岩山で小さな霊場になっていた(写真)。
なお、この寺には衣川館をひそかに脱出し北行する源義経が一夜の宿を取ったという伝説が伝わっている。そのとき義経の従者が残していったという笈(おい:旅の僧が背負っている脚の付いた箱)が伝わっているという。
(2001年08月13日訪問)