マリア観音

小さな鍾乳洞に鎮座する慈母に満ちた石仏。

(岩手県一関市東山町長坂)

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続いて幽玄洞という鍾乳洞に向かう。幽玄洞へと向かう道の周囲は切り立った崖だ。

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その崖をぬって走る道のかたわらに、「観音霊山」というそそる看板が立っていた。

しかもその下には「子育て観音(マリア観音)洞窟住居跡」という素敵な誘い文句も。

これは立ち寄らないわけにはゆくまい。

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山門は八脚門の仁王門。

ほかにはトイレ、拝観受付所のような小屋があるが無住。

拝観料は200円。仁王門中に賽銭箱があるのでそこに納める。(ただし結論から言えば拝観料200円は高いと思う。内容から言えばタダもしくは志納でもいいレベルではないだろうか。)

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仁王門を過ぎると、石段がありその左右は三十三観音霊場になっている。

どうやらマリア観音は奥に見える洞窟の中にあるようだ。

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洞窟は鍾乳洞だがあまり深くなく、照明もあるから懐中電灯などの装備は必要ない。

突き当りにマリア観音がいた。

なかなか慈母にあふれる感じの像で、確かにマリア観音と名付けたくなるのはわかる。

だが、看板の説明を見ると「隠れキリシタンのマリア観音ではないかと言われている」とか「古くから多くの信仰を集めたという伝承もある」などと言葉尻がどうも曖昧だ。しかもローソクの煤で黒ずんでいるとはいえ、なんだか新しそうな像なのも気になる。

本当に江戸までさかのぼるものなのだろうか‥‥。

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マリア観音の洞窟の左手には細い穴が続いていて、その穴は崖の裏側まで抜けている。

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洞窟を抜けたところ。

この崖に行くためには洞窟を抜けなければならない。チャチなファンタジー映画にでも出てきそうな地形だ。

実は田舎の群馬県にも千人窟という洞窟があって、洞窟を抜けなければ行けない場所にお堂がある。私は物心ごころつかないころにその洞窟に入ったことがあったらしく、子供の頃に時々こんな地形が夢の中に出てくることがあった。

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洞窟を抜けたところには階段があって、さらに百観音の霊場がある。

雨上がりで滑りやすい上に、ぬかるみ除けに所々に敷いてある廃じゅうたんに苔が生えていて余計に危険な状態になっている。細心の注意を払っているのに何度も滑ってしまった。大変危険な霊場だ。じゅうたんの撤去が望まれる。

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観音がとぎれてもさらに階段が誘うように続いている。

何かあるといけないので、とりあえず進んでみる。

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さんざん登ったところに四阿(あずまや)があった。道路がはるか下のほうに見える。

山道はまだ続いていたが、もう宗教施設らしきものはなさそうだったので引き返すことにした。

あとで地図をみたら、山頂に唐梅館という城跡があったようだ。

(2001年08月13日訪問)

死者の結婚 (法蔵館文庫)

文庫 – 2024/9/13
櫻井義秀 (著)
「結婚」とは何か。山形県のムカサリ絵馬供養、青森県の花嫁人形奉納、沖縄のグソー・ヌ・ニービチ、韓国や中国・台湾の死霊婚など、死者に対する結婚儀礼の種々の類型を事例に、その社会構造や文化動態の観点から考察する。

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