琴平神社・地下霊場

本殿の築山の地下にある小宇宙。

(群馬県高崎市新後閑町)

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琴平神社の参詣のつづき。

本殿の背面に参詣をしたあと、最初に登ってきた階段とは別のルートで小山をおりていく。このような、上りと下りをわける参詣方法は、本サイトでは巡礼空間と呼んで、特に重視している。「巡礼空間」とは、通路にそって進むうちに、自動的に参拝すべき対象を巡ることができる信仰装置のことである。

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その帰路の石段を降りていくと・・・・

なんと溶岩を積んで作った洞窟への入口に通じている。

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神道で地下霊場というと、とっさに思い浮かべるのは、富士信仰の胎内くぐりだ。そして、その胎内くぐりをシミュレーションするような洞窟を備えた富士塚も存在する。

この琴平神社の本殿のある小山は、見ようによっては富士塚的なものにも見える。

金毘羅信仰のどこからどうやって洞窟ができあがったのかまったく謎である。

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奥へ進んでみよう。

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途中の一番暗いあたりに、提灯がともっていて、お稲荷さんが祀られている。

「和田稲荷大明神」とある。和田とは現在はJR高崎駅南西側の住所に残っているが、もともとは高崎市街地を指す古い地名だ。

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箱庭ほどの大きさのものだが、奥のほうの小さな鳥居を見ていると、巨大な地下空間にいるような心地がしてくる。遠近感をうまく利用している。

まさに小宇宙。

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さらに進むと光が差し込んでくる場所に出る。

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洞窟の途中に出口があるのだ。

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この出口があるために、洞窟の中は電灯なしで通行できる程度に明るくなってしまっているのが残念。

もしこの出口がなければ、この地下霊場はかなり鬼気迫るものになったろうと思うと、惜しい気がしてならない。

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通路の最終的な出口は、天狗像の裏側になる。

興奮のあまり、わかりやすいアングルの写真を撮り忘れた。

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小山の周りの他の社殿を見ていこう。

階段左側にある末社。

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観月殿を下から見上げたところ。

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小山の右側奥にある弁天社。

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だるま奉納所と末社の稲荷神社。

この神社では1月10日にだるま市が行われる。その際にお焚きあげがあるのだろう。

稲荷神社に関しては、琴平神社より前にもともと稲荷神社があったのだという。社伝によれば、琴平神社は高崎藩士の寺田宗有という人物が一昼夜で香川から分霊したという。年代としては、江戸の後期のようだ。

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この神社に地下霊場が誕生したのはいつごろのことだったのだろう。

同じ高崎市内の観音山には、洞窟観音という大規模な地下霊場があるが、溶岩を配して奥行きのある空間を演出するところなどにかなり共通点が感じられる。どちらかがどちらかに影響を与えたとも十分に考えられるのではないか。

(2013年01月13日訪問)