ガバーロンパゴダ

デコレーションケーキのような三階建てパゴダ。

(ミャンマーカレン州パアン)

パアン市ではホテル暮らしなのだが、ホテルから歩いて行ける距離に不思議な形の寺があることは、着任してからずっと気になっていた。

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きょうはカレン州に派遣されて最初の日曜日で、実質的に初めて自由に出歩ける日である。まずホテルの近くにあるこのお寺に行ってみることにしよう。

現地のスタッフに連れていかれるのでなく、自分の意志、自分の足で訪れる、これが最初の寺ということになる。ただし寺の外観に反してこれは観光寺院ではなく、修行用の僧院なのである。

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山門は北と南にあるが、これは北門。

最初に立ち入る寺が修行用の僧院というのは、ちょっと難易度が高い気もするが、勇気を出して入っていこう。

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門を入ったすぐ左側には診療所があった。寺が病院を運営しているのではないか。

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境内は小さな丘の頂上を占めている。

敷地は広くないので、建物の全景を写真に収めることはむずかしかった。

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ところどころに建築資材置き場がある。

これは煉瓦で、たぶんパゴダをつくるのだろう。他にコンクリートブロック置き場もあった。

まだ建築中の部分があるようだ。ミャンマーでは建築中のままなかなか完成しない寺はめずらしくない。

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パゴダに付属する尖塔。

この種の尖塔には四面仏が付いていることが多いのだが、他に、地球儀が付いていることも多いと思う。

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塀で囲まれた一角があり、菩提樹の下で説法する釈迦のジオラマがあった。釈迦が悟りを開いたあと、一緒に修行した仲間に教えを説く場面だ。

手前にくつ脱ぎ所があり、釈迦の前の赤いタイル敷きのところが拝礼ポイントとなる。

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釈迦の背後は、一回りできるようになっていて、小さな祠が8つあった。

だが、これが八曜日の守り本尊なのかどうかはわからなかった。眷族の動物のモチーフが描かれていないし、それぞれの祠に書かれている文字もどうも違うようだった。

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水がめ。

たぶん機能していない。

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境内にはお坊さんも修行僧も見当たらず、近所の子供たちが遊んでいるだけだった。

建物は360度均一な構造になっていて、どちらが正面ということもなかったので、入れそうな入口から中に入ってみた。

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入口を入るとすぐに階段があり、二階に続いている。

一階には部屋はなく、床下か倉庫なのだろう。

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二階に上がったところ。

いきなり工事中のような雰囲気。電灯もなく薄暗い空間だ。

放射状に四畳半くらいの部屋が並んでいるが、中には何も置かれていない。

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一部屋だけ入居者のいる部屋があった。

どうもここは修行僧のための僧房らしい。

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三階への階段は、二階への上り口とは少し離れたところにあった。

迷路っぽい構造だ。ドラクエの塔のマップみたいだ。

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階段はかなり急なところもある。

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三階の間取りは二階と同じようだった。

屋上へ向かう。

屋上への階段はバルコニーにあった。ますますドラクエっぽい。

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屋上に出た。

薄暗くて工事中の室内とは違い、明るくきれいな別天地だった。

屋上には外周に沿って8つの塔屋がある。そのうち半分は階段室で、残りは仏像を祀った祠である。

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境内で遊んでいた子供たちも上がってきた。

外国人が来たので面白がっているようだ。

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ホテルの裏山から見た景観。小山の上に建っているし、周囲に高い建物などなどないのでとても眺めが良い。

それにしても、これが観光寺院ではなく修行用の地味な建物っていうのがさすがミャンマー。

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中心に建っているパゴダは内部に入れる構造だ。

一般的なパゴダの内部には部屋はなく、人が入ることはできないから、これは珍しい構造といえる。

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中に入ってみると中心に四面仏があった。

後日、職場で通訳の人に四面仏の意味を聞いたら、「世界のすべての方向に仏の慈悲を発信するものだ」というようなことを言っていた。

日本では釈迦の4つの段階を表す四面仏を見たことがある。

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この寺の四面仏は、単にすべての方向に向いているというだけではなく、時間的あるいは機能的な違いがあるように思う。

と言うのは、印相(手のポーズ)がそれぞれに違っていたからだ。これは説法印の一種だろうか。

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だがそれぞれの印相が何を意味しているのか私にはわからなかった。

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「仏像の見方」というようなガイド本がたくさん出版されているが、現実の仏像見学で生じた謎にはこれまでほとんど役に立ったことがない。どの本を見ても、「有名な寺」の「有名な仏像」の「有名な小ネタ」が繰り返し書かれているだけで、網羅的、体系的に整理された本に私は出会ったことがないのだ。裏話や背景などはいらないから、すべての仏像のすべての要素の名称と機能を列挙した図鑑って作れないものだろうか。

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こうした印相にはきっと意味があるはずだと思うのだが、こんな簡単なことすら調べることができないのが情けない。

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屋上から見た尖塔。

基部の四方に祠があるだけでなく、頂上部にも四面仏が付いている。特徴的なのは途中にある地球だ。これは仏と全世界の関係性を表現しているものだろう。

いつも「携帯電話基地局のアンテナみたいだな」などと思って見ていたのだが、もしかすると仏の慈悲をあまねく世界に広げるという、本当にアンテナ的な機能のものなのではないかという気がしてきた。

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パゴダから東側を見たところ。

Google Maps の航空写真を見ると、すごく人家が密集しているように見えるのだが、こうして近くから見たり、道を歩いているとむしろ緑が多く感じる。

このエリアにけっこう豊かそうな家もあった。ミャンマーでは停電が頻繁にあるのだが、金のある家は自家発電をして明かりをつけていた。貧富の差はそれなりにあるのだろう。

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パゴダから北東方向を見たところ。

パアンの中心街方向になる。緑が多い場所はパアン大学のキャンパスだ。

奥に見える山はパアプゥ山。サルウィン川の対岸だ。山頂にパゴダが見える。

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パゴダから西側を見たところ。この斜面には比較的貧しい家が多いように見えた。

奥に見えるとんがった山はチャーイン山。この山頂にパゴダが見える。

丘の中腹にも金色のパゴダが見えるが、すぐ近くに見えて上り口が遠かったので結局行かなかった。

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寺の庫裏。

かなり生活感がだたよっていたので、遠めに写真を撮るだけにしておいた。

(2014年01月26日訪問)

ビルマ仏教: その歴史と儀礼・信仰

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池田 正隆 (著)

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