チャーインパゴダ・山上伽藍

パアン市を一望できる山にあるパゴダ。

(ミャンマーカレン州パアン)

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パアン市のシンボル、カンターヤ湖から南を見ると、なだらかに続く尾根の頂上にパゴダが見える。

チャーインパゴダだ。

このパゴダは夜になるとライトアップされるので、いやがうえにも目立つ。

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Google Maps の衛星写真を見ると道があるようだったので、日曜日の朝から登ってみることにした。

登り口はグランドヒルというホテルの北側にあるが、目印がないのでわかりにくい。

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少し登ると総門が見えてきた。

総門の形式は、ガバーロンパゴダシュワーテ僧院と似ている。赤い板状の装飾に文字だけで構成されたものであり、たぶん総門としては比較的簡素なほうだろうと思う。日本の建築の懸魚(げぎょ)を逆さまにしたような形が多いので、以後この様式を「逆さ懸魚型」と呼称しようと思う。

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左側の道が「寺がありそうな雰囲気」だったので左へ進んでみたら僧院で行き止まり。

どうもこの先にパゴダへの道があるようには思えない。僧院で飼われている犬が吠え出し、それを聞きつけた修行僧が様子を見に出てきてしまった。

「道まちがえました~」

気まずいところに侵入してしまったときは、とりあえずこの常套句だ。

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「パゴダ行きたいんだけど、右の道だったですかね?」

すると、

「戻ると遠回りだから、お寺の中を通って行きなヨ」

と言って建物の中を通らせて、正しい登山道を教えてくれた。ありがとう、寺のお兄ちゃん。

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砂ほこりの舞うような道をひたすら登っていく。ワダチがあるので、どうやら自動車で上まで行けそうだ。

などと思ってトボトボ歩いていたら、上から車が来て後部座席の人が窓から何か叫んでる。

あ、よく見たら知ってるミャンマー人だ!コーゴン洞窟寺の論文くれた家の奥さんではないか。向こうもこんな場所を日本人が歩いているのでびっくりしたのだろう。乗せてってくれるかと思ったが、そのまま下っていってしまった。

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道から見える崖の上にパゴダが見えたので登ってみた。林の中にたたずむ小さなパゴダだ。

このパゴダへ行く道はなく、崩れかけた崖みたいなところをよじ登るしかなかった。降りるのはもっと大変だった。どうやらミャンマーでは、寺のすべての堂宇を見てまわるというのは無茶みたいだ。

それにしてもトラックやユンボが来れないような場所にどうやってパゴダを建てるのだろう。100%人力か。

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登山道に戻ってまた登っていく。

登山口から30分。だいぶ標高も上がってきた。

道はまっすぐな尾根に出て、小さなピークになる。その場所に銀色のパゴダがあった。

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基壇はまだ作っている途中のようで、近づけない。

途中と言っても、もう何年も工事をしていないようなので、完成するのはまだ遠い未来だろう。

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この尾根には小さなパゴダがもう一つあった。

ミャンマーには巨大で壮麗なパゴダもたくさんあるが、そればかり見ているとだんだん飽きてくる。そして逆にこのようなひなびたパゴダや壊れかけたパゴダに味わいを感じてしまうのだ。

これは今回の旅で見たパゴダの中でも、かなり印象に残ったパゴダだった。

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いいなあ。実にいい。

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小さなピークを過ぎると、登山道はかなり急になってくる。

このあたりで、たくさんの現地の人たちが山から下りてきた。朝からお参りに行って、もう帰ってくる人たちなのだろう。

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登山口から1時間。

僧房があった。

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修行僧っぽい人が着替えていたので、あまり奥へは入らないようにした。

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小さな祠がある。

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中にはおっさんがいた。おっさんの前にはお茶やご飯が供えられている。

右のお盆には、バナナとヤシの実。

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この僧房の庭には、仏陀に混じっておっさん像もあった。

目つき悪いな。

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僧房からちょっと登ると、お坊さんの大きな看板がある場所に出て、車道は行き止まりになっていた。

オートバイに二人乗りできた若いカップルがいて、  オートバイを駐車して登っていった。車で登った人たちも、ここからは歩きなのだろう。

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ここからは石段も奇麗に整備されているので、本来はここからは裸足になるべきだと思われる。

でも先に行った若いカップルもサンダルのまま登っていったし、まだこの先どのくらいあるのかわからないので、私も靴のまま登ることにした。

階段の登り口にも小さな祠が。

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祠の中には、花や果物が供えられていた。

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しばらく登ると、階段が無茶な角度になってくる。

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手すりがあるので、手すりにすがりつくようにしながら登っていく。

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登山口から1時間15分。

やっと頂上が見えてきた。

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展望台があった。

パアン市街を一望にできる素晴らしい眺めだ。

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尾根を渡る風が気持ちいい。

階段を登った汗もひいてくる。

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展望台は仏足石堂にもなっている。

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途中にあった小さなパゴダや僧房はずいぶん下になった。

奥にはパアン大学、サルウィン川も見える。

標高は400mくらいであろうか。

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山頂パゴダは予想外にこじんまりしたものだった。

市街地からも見え、夜はライトアップで輝くので、もっと荘厳なパゴダかと思ったのだが。

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パゴダの裏には講堂のような建物。

ただし、講義をするだけではなく、衣食住すべてできる僧房も兼ねているようだったので、中に入るのはやめておいた。

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チャーインパゴダのある尾根は、聖地であるズェガビン山とひと続きになっている。

回峰行のための道でもあるのかと思って、僧房の裏手の方を見てみたが、どうもここから先へは道はないようだった。

トイレがすごいところにある。汲み取り出来るとも思えないのだが、空中放出式か?

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先に登っていったカップルがスマートフォンで記念写真を撮っていた。

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この岩は崖から突き出していて、勇気を試す場所にもってこいなのだろう。

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山の上からパゴダがいくつも見える。右側に見えるのは先週行ったガバーロンパゴダだ。

町中にもまだ行っていないパゴダがいくつか見える。

こうした名もないパゴダを巡礼しながら、アジアの見知らぬ町に溶けて消えてしまうような人生を夢想をするのは私だけであろうか。

(2014年02月02日訪問)