阿波山清の水車小屋

1986年製というが設置場所は自然。

(岡山県津山市阿波)

先ほど、線香水車の話を聞いたおばあちゃんから、上流の阿波村というところに水車小屋を持っている民宿があるという情報を得たので阿波町に向かう。

阿波村は今回の旅の参考とした書籍『日本列島現役水車の旅』では触れられていない地域であり、聞き込みと眼力がすべてとなる。

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民宿はすぐに見つかった。民宿「阿波山清」という。

民宿の前は直線の長い傾斜路で、道路の両側には小さな用水路がある。いかにも水車小屋が作られそうな立地だ。

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民宿の前に、川魚を飼っていると思われる池があり、その池への導水の一部が水車小屋へつながっている。

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水車小屋は切妻の石置き屋根で、ややわざとらしい感じ。近年、観光目的で作られたものなのだろう。

ただし水車小屋の敷地を人家の石垣がよけていたり、導水路のありようなどはきわめて自然。もともと水車小屋があった可能性は高いと思う。

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水車を使わないときは、小屋の手前で排水するようになっている。

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しかし、実際にはせき板が壊れていて水輪のほうへと水が流れ込んでしまっていた。

掛け方は胸掛け。特徴的なのは、水輪の下部に円弧形の木の樋があること。掛けた水が効率的に水受けに入るようになっている。製紙水車線香水車ではこの円弧は石垣で作られていた。

観光水車とはいえ、構造はかなりきちんとしている。雰囲気だけ再現したようなデタラメな水車ではなく、水車の施工に慣れている大工の仕事であることがわかる。

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ただし水車はしばらく使われていないようで、水輪は固着してしまっていた。

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内部は搗き臼×1。

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棟札を見ると「昭和61年(1986)6月 水車新調」とある。このとき補助金が出て水車を建て替えたのではないかと思う。

(2003年04月30日訪問)