本日最後の鍾乳洞、岩屋の穴へ向かう途中、阿口という集落で道ばたにベーハ小屋があった。
実はこの旅のころはまだ、ベーハ小屋に関して見識も足らず、もっと注意深く観察すればよかったのだが、いま写真を見ると右側に越屋根のない小屋が写っている。これがベーハ小屋だとすると、私がこれまでに見たことがないと思っている、広島式なのかもしれない。
右側に写っていた建物が気になっていたので、のちにこの近くを通ったついでに確認のために寄ってみた。8年後になる2011年1月22日のことである。
ところが残念なことに、右側に写っていた建物は取り壊されてしまっていた。周辺の様子から、取り壊されてからまだ間もない感じだった。
改めて左のベーハ小屋の様子を見ると、外壁は土壁だが非常にシャープなシルエットで、崩れたりひび割れたりしている様子がない。
また、屋根を見ても、大棟や軒が歪んでいることもなく、ピシッと直線になっている。大工の腕がよかったのだろうか。
私がこれまでに見た中でももっともきれいな状態を保っているベーハ小屋だと思う。
もしかすると、近年まで修復しながら使用したベーハ小屋だったのか、あるいは、使用しなくなったあと壁を塗り直すなどの補修をしたのかもしれない。
今回の旅で見た他のベーハ小屋は、片側の妻にハシゴを取り付けて、天窓の開閉をするようになっていたが、このベーハ小屋は天窓はあるがハシゴを取り付けた様子がないのが気になる点だ。
さて、形式について考察してみよう。
破風は越屋根の部分で切れている、破風切れ型。両方の妻で切れているので、両破風切れ型とでもいえばいいか。
内部の構造については、この旅で見てきた他のベーハ小屋は、すべて折衷式だと推定してきた。その根拠は越屋根の換気口が閉鎖できないという点だ。この写真では、越屋根の平側がガラリ板になっていて、常に空気が抜けるようになっているからである。
反対側の妻を見てみる。
こちらには妻の部分に観音開きの戸がある。
専売公社の元職員で、退職後に葉タバコ農家をやっていた方から「越屋根の横に突き上げ戸があるのは折衷式」と教えられたことがある。それに従うなら、これはやはり折衷式ということになろう。
(2003年05月01日訪問)