坊の乙女台

すべてが繊細、遊んだら壊れてしまいそう。

(徳島県三好市井川町西井川)

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徳島自動車道の井川池田I.C.の西側の集落の中の小さな公園があった。

その公園で見かけた一点モノの滑り台はいまも忘れられない。これは私が滑り台巡りを始めて出会った台の中でも最も美しい台の一つだ。

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すべてが繊細で、登って遊んだら壊れてしまうのではないか、そんな乙女のようなはかなさをまとう台だ。

タラップ部分の手すりがそのまま円弧を描いてデッキ部分の手すりになっているところは公団型と共通するが、公団型の壊しても壊れないような武骨さとは対極にある。

公団型というより、開放デッキ型と分類すべきだろう。

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手すりの束柱(つかばしら)(手すりを支えている短い柱)の本数が少ないのが顕著な特徴である。滑降部の手すりに至っては一本の束柱もなく、起点と終点の二点でのみ手すりを支えている。

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タラップの側桁(がわげた)はパイプになっている。

そのせいで後ろから見ても、細い印象を与える。

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側桁と踏み板は溶接されているのが一般的だが、この台ではアングル型の金物を使ってねじ止めしてある。こうした細かい模型のような仕事がこの台の特徴だ。

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室内で飛ばす超軽量飛行機の翼のような印象の手すり。

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さらに気になるのは滑走面の素材である。

滑走面は二枚の樹脂板を接いでいるのだが、今までによく見たFRP樹脂板や硬質塩ビ板(スノコ台)とはどうも違う材質のようなのだ。

確信はないのだが、アクリル板ではないかと思う。

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その根拠は、

  • 薄いのに平板だけで人の体重を支えてたわまないほどの硬度があること。(硬質塩ビ板の滑り台の場合、たわまないように冖の字型になっている。)
  • 摩滅してない背面をみると、ガラスのような光沢があること。(左写真:FRP板であれば繊維の凹凸がある。)

という点である。

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中央部分で板が接いであるが、接着はされておらず、ここもねじで止めてある。

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半分ねじが外れていたので、背面から指で押し上げてみた。いわゆる「そぎ()ぎ」という接ぎ方。両方の板を斜めに切断しつなぎ合わせる手法である。

切り口は滑らかにはなっておらず荒くヤスリがけしたような筋状の削り跡が残っていた。

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公園にはほかにグローブジャングルがあった。

現在はこの公園の遊具はすべて撤去されたようだ。

(2003年09月21日訪問)

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