高原平島の富士型台

手作り感あふれる富士型台。

(徳島県石井町高原平島)

写真

日曜日、買い物に出かけたついでに、県道30号線経由で石井町から鴨島町のほうをひと回りしてみた。県道30号線は別名「徳鴨線(とっかもせん)」とも言って、吉野川下流域を徳島市から鴨島町までを東西に走る幹線だが、西部が鴨島町でうやむやに終わっているため「どこか遠くへ行くのに使う」という道ではなく、どちらかといえば裏道的な街道だ。

だが私がよく利用する衣料品店やスーパー、外食店は国道よりもこの徳鴨線に多くあるため、通行する頻度の高い道路なのだ。

写真

その徳鴨線からちょっと引っ込んだ広場に滑り台が見えたので立寄ってみた。

2レーンの滑降部を180度逆方向に伸長した、いわゆる富士型台である。

写真

滑り台の全体的なイメージは「武骨」。

そして、滑り台としては稚拙というか、造り慣れてない感じが各所に表われている。

デッキのタイプは「開放デッキ」型。

写真

タラップは建築物に使う階段のような、かなりの重量級だ。その重さを支えるためにデッキには4本の柱を立てている。

以前に藍住でみた台を思い出させる。

写真

多くの富士型台は1本足で、滑降部とタラップとで合掌や三脚構造を作って安定させているものが多い。

だがこの台では、タラップも滑降部も柱にもたれかかるようになっているのだろう。

写真

滑降部の手すりはデッキの手すりの高さに溶接されているため、漏斗のように末広がりのデザインになっている。

これは逆に言えば、下方に向けてすぼまった構造であり、滑るときに腕や(くび)を挟む可能性があり、かなり問題のあるデザインであろうと思う。遊具や体育器具などを作り慣れていない鉄工所が作ったのだろうと推察する。

写真

滑降面はステンレス。

ただし途中で接いである。

写真

滑降面の側壁は壁ではなく鉄筋と薄板を溶接したもの。

細かい隙間が多く、ここも問題ありだろう。

写真

ほんと、滑るときに指を挟む子どもがいるのではと、ハラハラしてしまう。

写真

いっぽうで、タラップだけは過剰なほど材料をふんだんに使っている。

ここまで重厚にしなくても大丈夫だろうに。

写真

デッキはC型鋼を並べたものだが、錆が出ていて本来の強度を失っている。

いろいろとやばそうな台である。

写真

この公園には他にもオリジナリティあふれる遊具がある。

これは遊動円木。遊動部と地表との隙間が低く、手すりなどもないため事故につながりやすい構造。これが狩られずに残っているというはすごいのではないか。

写真

鉄棒とブランコ。

鉄棒も他ではほとんど見たことがない合掌造りだ。

写真

ブランコは座面が細い。

座面とチェーンを連結するOリングがやや細目。人の体重など知れているから強度的には問題ないのだろうが、耐久性に不安を感じさせる。

写真

「友情よ永遠に」と書かれた、手形の記念碑。

60枚ある手形のほとんどが大きさが同じなので、町内会などではなく、中学校のある学年全員の手形なのだろう。同窓会で建てたものかもしれない。

写真

境内には大きな樹がある。ムクの木だろうか。

ほかに、園内にはナツメの樹も植えられていた。

写真

大樹の下にあった五角地神塔。この広場は、明治に合祀で廃止された神社の跡地なのかもしれない。

2018年4月現在、この広場の遊具はすべて撤去されてしまっている。記念碑は健在である。

(2004年10月17日訪問)

日本木造遺産 千年の時を超える知恵

単行本(ソフトカバー) – 2024/6/8
藤森 照信 (著), 藤塚 光政 (写真)
建築探偵・藤森照信×写真家・藤塚光政
深い洞察力と渾身の撮影で、日本の木造遺産を総力取材!
2019年から足かけ5年にわたる雑誌「家庭画報」の好評連載を書籍化

amazon.co.jp