正八幡宮の境内にあった神宮寺である、大師寺。これまで、神宮寺は近くにあるとか隣りにあるという説明をしてきたが、この大師寺は神社の境内にあるという表現が適切だ。
本堂は黒い塗り瓦の宝形造り。
本堂の濡れ縁には犬の像があった。
これは戦争中の軍用犬でポニーという名前のシェパード。ポニーは岡山県の兵学校で飼われていた軍用犬で実際に戦場にも従軍したことがあったという。負傷したのか病気になったのかはわからないが、日本に帰ってから死亡し、この寺に祀られている。
御神籤の自販機があった。パイロットランプなどがなく、完全に無電源で動作するタイプ。値段は20円。
このタイプの機械は、籤が売り切れたらどうするのだろう。商品取出口からお金が返却されるのか? それともお金が吸い込まれて終わるだけなのか。
本堂の右側には庫裏。
その庫裏のさらに右側にハナレがあった。信徒休憩所かなにかだろう。
寺の入口の前に鐘楼があるのだが修復中だった。
この鐘楼は、立地的には正八幡宮の境内にあるので、正八幡宮の記事で触れるべきだったかもしれないが、一応仏教建築ということで神宮寺側に書いてみた。
鐘楼は宮大工が作ったのか家大工が作ったのか微妙な感じの素朴な建物のようだ。
神宮寺を見終わって、車を停めていた正八幡宮の参道の端まで戻ってきたときには、あたりはすっかり日暮れて真っ赤な満月が昇ってきていた。
参道から反対側の丘を見ると、ちょっと気になるお寺が見えたのだが、時刻は19時を廻っておりさすがにもう参詣ははばかられた。
これできょうの旅はオシマイになる。
ここ山口から自宅(徳島)までは全区間で高速道路を使っても5時間以上。私は高速道路はほとんど使わず下道とフェリーを使う上、その下道でも一桁国道などを避けて間道や海岸沿いを通ったりする。さらに途中で夕飯を食べたり日帰り温泉でも入ろうものなら10~12時間はかかるだろう。でも、知らない町を走るのはそれ自体が楽しみだから、12時間でも苦にならないし、むしろ12時間もお楽しみが続くという感覚だ。
秋穂町内で地の魚介類でも食べたいと思って少し探してみたが、適当な店が見つからないうちに20時を過ぎてしまった。どうやら町内でおいしいものを食べるのはもう無理そう。
そこでふと思い出したのが北向地蔵にいたネコのことだ。もしかしたら、全線高速道路を使って途中休憩なしで頑張ったら、なんとか徳島まで連れていけるのではないか。
そう思い、来た道を宇部市まで戻ることにした。真っ暗な約20kmほどの道を走りながら、家でネコを飼うのに支障がないか、出張のときはどうしようかなどと具体的なことをひとつひとつ考えながら、決心を固めていった。
だが北向地蔵に着いてみると、日中あれほどいたネコはどこへ行ったのか、1匹もいなくなっていた。ほぼ連れて帰るつもりになっていたので少し落ち込んだ。あのネコたちとは縁がなかったということなのだろうな。心残りのまま、はじめに考えていたとおり12時間の帰路についたのだった。結局、その後徳島に住んだあいだネコを飼うことはなかった。
(2004年05月04日訪問)