パアン織物職業訓練校

機織りの技術を教えている専門学校。

(ミャンマーカレン州パアン)

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パアン市内にある州立の織物の専門学校を見学した。

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学校の名前は、

Small-scale Industries Department

Weaving and Vocational Traning School

テキスタイルを中心とした専門学校である。

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正門を入ると正面には大きな車寄せの付いた実習棟がある。この学校を見学するひとがメインで連れていかれる建物だ。

入口には生徒たちが作ったストールなどの小物を販売しているので、けっこう見学者があるのだろう。

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建物は手機(てばた)力織機(りきしょっき)が半々の面積で設置されている。

こちらはカレン州でよく見るドラム式の高機(たかばた)。高機はミャンマー語でヤッカンという。

高機の後ろ側がドラム整経機(せいけいき)になっているという広幅の複合機だ。

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推定だけど、ミャンマーのこのタイプの高機は、イギリスを起源として、ドラム整経と一体化した進化はミャンマーで起きたのではないかと思っている。

この高機が実際に産地で使われているところはこれまでにも何度か紹介してきた。(

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入口付近に置かれている、中国製のジャガード織機。

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ジャガード織機とは、布に模様を織り込むとき、タテ糸を1本単位で上げ下げできて、どんな不規則な模様でも織ることができる機である。タテ糸の本数は膨大なので、かつてはパンチカード、現代ではコンピュータで制御する。データさえあれば絵画のような組織を織ることができる。

でもこの機械は稼働してないんじゃないかな。機にかかったままの布はだいぶ古くなっていた。

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これだけの複雑な機械なので、正常にメンテナンスして運用するのにはかなりの熟練や周辺の機材が必要になると思われる。

学習のための展示機なのだろう。

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これなんだろ?

テンションをコントロールできるタイプの給糸装置だとは思うが。

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ジャガード機の奥にはドビー織機が並んでいる。

ドビー織機は、タテ糸の上げ方が数パターン設定可能で、その制御がパンチカードで自動的にできる織機だ。以前実働しているのを見たことがある。

数パターンでは小さな柄の繰り返ししかできないが、人間が足で「踏み木」を押すのにくらべたら圧倒的に正確だしスピードも速い。この機械は稼働していて生徒が実習で動かしていた。

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大型のドラム整経機。

ドビー織機やジャガード織機にセットするタテ糸を、同じ長さで大量に引き揃える機械。

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クリール。ドラム整経機に巻く糸のボビンをセットする棚である。

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(かせ)繰り機。

カセ巻きの形で購入した糸をボビンに巻き直す機械。たぶん、手前の列ではテーパーの付いたコーン巻きができ、奥の列ではH型のボビンや(くだ)に巻くことができる多機能機だと思われる。

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別の実習棟。

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こちらでは原始的な腰機(こしばた)による実習が行われていた。原始機はミャンマー語で「ジャッコゥ」という。

原始的な織りだが、木材を削ったシンプルな()、竹の綾棒(あやぼう)小管(こくだ)、あとは糸だけで布を作ることができる技術だ。つまり糸綜絖(いとそうこう)(おさ)がないという機である。タテ糸は輪になっていて整経しながら糸綜絖を入れていくので、綜絖通しと筬通しという工程が存在しない。

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別の校舎。座学のための教室だろう。

1階にはミシンが並んでいたので、縫製も教えているのだ。

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野外の倉庫に高機が大量に並んでいた。

この学校を修了すると、この機がもらえるのだという。

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構内には寮もあるので、田舎から出てきてここで住み込んで機織りを学べるのである。

機織りは高額の収入ではないだろうが、田舎で現金収入が得られる貴重な仕事なのだ。

(2018年07月24日訪問)