中山千枚田の一番標高のある山ぎわの、車が通れない狭いあぜ道を歩いている。村人からこの道の先の山寺に昭和名水百選に選ばれた湧水があると聞いたからだ。
もちろん車遍路の人々のための車道はあるから、遠回りすれば寺まで車で行くこともできるのだが、わずか300mくらいの距離だから、棚田の景観を楽しみながらあぜ道を歩くことにした。
寺は「
急な参道を登るとまず鐘堂がある。
その先には長屋門の山門が見えてくる。
この寺の境内、というよりも、千枚田の最上部は常緑樹やカシ類の深い森になっていて、県指定の天然記念物に指定されている。山水と天水に頼っていた時代に、水源涵養林として大切にされてきたのだろう。
スギを中心とした単相の人工林には保水力がないという話は単純だから誰しもが簡単に口にする。でも実際に山村を訪ねると、人工林を増やしたあと水が涸れたという湧水ポイントがあったりするので、ある程度は信憑性があると思っている。
山寺にしては立派。でも無住のようだ。
本堂は宝形造。
その左側には鎮守社。
境内の左奥のほうにも鎮守社があり、その鳥居の横に「湯船の水」という湧水があった。
湧水は水船からチョロチョロとあふれている。小さな集落を潤すには充分な量だろう。
でも800枚の棚田に水を張れる量ではない。
林の中に用水路があった。この山の裏手には、江戸時代に造られた蛙子池という溜め池があるので、そこから千枚田の水が来ているのかもしれない。
(2006年10月09日訪問)