きょうは県西の町、貞光町へ来ている。
貞光町の有名な映画館、貞光劇場の写真を撮るためだ。
貞光劇場は町を東西に通る街道に面しているが、建物は少し引っ込んでいるのでぼんやり走っていると気付きにくいかもしれない。
目印はこのゲートだ。
横には上映中の成人映画のポスターが貼られている。貞光劇場は現役の映画館で、古い映画館の多くが辿ったように成人映画の上映館として生き残ってきた。
ゲートを入って少し坂を下ったところが駐車場になっていて、10台くらいは楽々駐車できそう。現代の映画館を考えると10台じゃ足らないけれど、この劇場が建った昭和初期にはこれで十分だったのだろう。町も賑やかだったし、TVなどの娯楽がなかったので、多くの人が徒歩や二輪車で訪れたはずだ。
入口の上に張られているポスターに郷愁を感じる。私が子どもの頃には映画館のこうした看板はすべて手描きだった。古い映画館には役者絵が掛かっていたりした。
この劇場が建ったのは昭和7年。出来たときは芝居小屋で、内部は2階桟敷があるようだ。1階は平場だったのを映画館の椅子に改装されているという。
実はきょうは映画館の開場まえに中をみせてもらえないかと思って12時ごろ訪れたのだが、従業員がまだ来ておらず閉まったままだった。
劇場の建物に倉庫のような部分が付属していて、次回上映作品のポスターが貼られている。
駐輪場だろうか。
切符売り場。入場料は1,000円均一。中の写真撮らせてもらえるなら、いま1,000円払ってもいいんだけど!
ここは映画館になってから増築された部分なのかもしれない。客と視線を合わせないようになっているのは、成人映画を上映していたからではなく、映画館の切符売り場自体がもともとこんな感じだったのだと思う。千葉県の大正館の券売所も似たような造りだった。
上映するリールが宅配便で届いていて、外に面したベンチに置き配されていた。
なんというか、、、のどかだな。
ちょいと隙間から中が見えた。映写室だろうか。
俳優のポスターが貼られているのも見える。
成人映画自体、いまでも新作が作られているのが驚きだ。若い世代の人たちはもうレンタルDVDなどを観るだろうし、ほぼ高齢者需要になっているのじゃないか。
私自身最後に成人映画を観たのは神楽坂の映画館で往年の日活ロマンポルノ名作のリバイバル上映をやったときだったけれど、ガラガラで2~3人しか客がいなかった。人口の多い東京であの調子だったら、この県西の小さな町でどのくらいの客が入るのだろう。
ただ、アダルトビデオと違ってピンク映画は女優さんの演技を見せる演出なので、今の人がロマンポルノとか観たら逆に盛り上がるような気がする。
とりあえず、貞光劇場を色々なアングルから見ておくか。
北側、1階、2階とも窓がある。ということは桟敷と回廊の間には壁があって2重の造りになっているのだろう。
裏側から見たところ。
こういう建物が見えたら、芝居小屋を疑うべきなのだ。
裏側の下屋部分は、芝居の小道具などがしまわれる倉庫かもしれない。
街角にも映画のポスターが。
むかしは街角によく成人映画のポスターがあって、小学生のころなどは前を通るときにドキドキしたものだ。
こういう風景自体がいまものすごく貴重なのではないか。
よく写真を撮っておかなければ!!
松任谷由実の『いちご白書をもう一度』という曲の中に「雨に破れかけた街角のポスターに」というフレーズがあるけれど、若い人は街角に映画ポスターが貼られているという状況自体、見たことがないのではないだろうか。
後日、夜にも訪れてみた。■
貞光劇場は私が訪れてから6年後の2011年に閉館している。建物は2022年現在、まだ取り壊されてはいないようだ。
(2005年05月29日訪問)