商家が並んでいるのは、映画館のある国道192号の旧道沿いではなく、剣山方面へ続く国道438号の旧道沿いだ。
この国道438号は、
貞光町は、その剣山地方からの林産物の集積地として、また、剣山地方への物資の流通基地として大いに繁栄した町なのだ。
町並みの特徴はこの写真の商家にも見られる「
「卯建」は「梲」または「棁」とも書き、商家の屋根の上に作られる土塀である。
延焼を防ぐための防火壁という実用性が言われているが、どちらかといえば富の象徴の意味合いのほうが強いと思う。
卯建を屋根に設置することを「ウダツを上げる」という。「商才がある」という意味の慣用句にもなっている言葉だ。卯建を上げた店が並んでいる。
県西では脇町が有名だが、この貞光町の卯建の町並みも相当に見ごたえがある。
上げ下げ窓の商店があった。
楽器店と書かれている。
横には車寄せのような玄関がついている。2階が音楽教室になっていたのではないか。
ここは剣山地方の文化発展も担った、文化の発信地だったに違いない。
2階部分の開口が少ない土蔵造りのしもた屋。
比較的古い建物ではないかと思われる。
造り酒屋。
金物屋。
これだけの町並みでありながら、ここは重伝建に指定されていない。そこがまた良いところだと思う。
本サイトをある程度読まれている方は、私が重伝建に対してものすごくネガティブな感情を持っていることはご存知だろう。重伝建が掲げる「保存・整備・活用」、私はこの3つはすべて不要なもので、町並みのホルマリン漬け、時間の逆行、テーマパーク化を進めることだと感じているからだ。
町並みの姿はどんなところであれ、歴史的、経済的な必然が結晶したものだ。それを観光という目的のために固定化すれば、町並みが続いてきた歴史をそこで終わらせてしまう。もし勉強目的でそこを訪れる人がいても、目に映るのは異なる産業基盤、異なる価値観で運営されている商店街でしかないだろう。
その点、この貞光町はまだ純粋培養された渓口集落としての性質を残していて、おかしな土産物屋などに邪魔されることなく、その歴史を感じることができる。
こうして立ち並ぶ電柱や路上駐車すら、いいものだな、と思えてしまのである。
卯建の間を抜ける路地があった。
「祇園小路」という名前みたいだ。
祇園小路を入ってみた。
特に何があるという路地でもなかったが、かつての繁栄を偲ばせる風景だ。
このころまだGoogleストリートビューサービスが存在していなかったので、町並みの動画を撮影するようにしていた。SD画質なので観る価値はないかもしれないが、その当時の様子の記録にもなるかもしれないので掲載しておく。➡ 動画
(2005年05月29日訪問)