一宮東丁の石倉

青石を積んだ壁の土蔵。

(徳島県徳島市一宮町東丁)

2007年元日。鴨島のほうへ出かけることにする。

このころ私は鴨島町の町外れの樋山地(ひやまじ)という寒村で家を買おうと考えて頻繁に村を訪ねていた。もともとその村は数戸の住人しかいなかったのだが、あるときみな山を下りてしまい連絡がつかなくなっていた。そこで村の神社の祭礼の日などに戻りはしないかとことあるごとに確認に通っていたのだ。きょうは元日。あまり期待はできないが、村へ行ってみることにした。

とはいえ、もう何度も通っているのでただ行くだけではつまらない。遠回りして村に向かい、帰りも鴨島界隈を徘徊するつもりだ。

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徳島市の南西、四国霊場の大日寺がある大字、一宮。その旧道を走っていると、道ばたに石積みの土蔵がある。

日本の在来建築では石壁が利用されたことはなかった。この倉もたぶん石積みというのではなく、腰壁の意匠として石を積んだだけだろうと思う。だがそれにしても、このように建築の壁に石を使うことは珍しいのだ。

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石はこのあたりで採れる阿波の青石、つまり緑泥片岩である。

倉の本来の用途はわからないが、厳重に施錠できる構造ではないので家財を入れるのではなく、作物や稲藁、簡単な農具などを入れておく蔵ではないか。あるいは、藍に関係するものかもしれない。

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というのも、この旧道の両側には藍農家が並んでいるからだ。

たとえば蔵の奥に見える藍農家など、いまなら蔵よりもそっちの写真を撮ったほうが良かったのではと思える。右隅にわずかに見えている釜屋の煙出し櫓がかなり立派だ。

(2007年01月01日訪問)