続いて、見沼田んぼの東縁の東沼神社へ。
ときどき小雨がぱらついていた天気は下り坂で、日暮れにはまだ時間があるのにあたりは暗くなってきていた。
駐車場は神社の崖下の見沼代用水のところにかなりの台数がとめられる。
ん? 駐車場の端にトンネルみたいなアーチの入口が見える!
近づいてみるとそれは胎内潜りをイメージしたゲートだった。
遠目にトンネルに見えたのは雑木林の林床が暗いからだ。
これは樹のトンネルといった感じのもので、崖下の見沼たんぼから崖上の神社境内まで続いていた。
神社の裏参道なのである。
胎内潜りの出口。
実はこの崖にはもともと地下道としての胎内潜りがあったらしい。1981年ごろ見沼代用水沿いの車道が拡幅されたことがきっかけで取り壊されたのを、ごく最近このような形で復元したのだそうだ。
崖下には富士塚の旧登山道があるが、立入禁止になっていた。
柵の奥の方を覗いてみると遠目に道しるべもあり、ここが旧来の登山道だったのだろ。
ここを登る人がいるらしく、執拗に立入禁止の看板が出ていた。
神社の境内を見ていこう。
駐車場の裏参道から来ると拝殿の横のほうに出るが、ここは表参道を戻って、ちゃんと鳥居から参拝することにした。
こちらが鳥居のある表参道。
神社の境内は東面している。
鳥居をくぐると右側にお札納め所。
東沼神社は富士塚の浅間神社から始まっているということで、祭神のノボリは木花咲耶比咩。絶世の美女とされる神様だ。
参道は石畳がきれいに敷き詰められている。
拝殿は入母屋平入り、千鳥破風付き唐破風向拝という近代の神社によくある豪勢な造り。
拝殿の横に、1間の飛び出た間取りがある。幣殿だろうか。
本殿は流造り。
本殿の裏側には人知れず巡礼道がある。
わたしは神社へ行ったらほぼ本殿の裏側を廻るけれど、こんな明確にここを通ってひと回りしなさい、って感じの道標はあまり見た記憶がない。
拝殿の右側には信徒の休憩所と社務所。
拝殿の左側には臨時護符売場のようなものがある。
境内には他に神輿庫。
続いて、肝心の富士塚を見てみよう。
富士塚は参道の左側、見沼田んぼ東崖線の崖っぷちに築造されている。高さは8m、直径30mで富士塚としてはかなり大きい部類。もし周りの森がなく、見沼田んぼの崖下から見上げたらさらに高く見えることだろう。
全体のシルエットも実際の富士山を想起させる形状をしていて、姿も美しい。
富士塚が現在の形になったのは平成23年(2011)の改修工事によるもの。
それ以前がどのような大きさだったのか、樹などが生えていたのかなどは不明。
ただ、この場所に富士塚が出来たのは江戸後期で、天保10年(1839)に奉納された絵馬にすでにその姿が描かれているので、歴史的にはかなり古いことがわかる。
では富士塚に登ってみよう。
登山道は1本だけで、上り下り共通。
上り口は水盤舎の横にある。
この場所の道標が五合目となっている。
つまり立入禁止の旧登山道に一合目~四合目の道標があるのだろう。そういう点ではいつかは旧登山道も整備して一合目から道標をたどれるようにしてほしいものだ。
もっとも、現実の富士山でも99.9%の登山者は五合目付近から登山するからこれでもいいのかもしれないが。
みるみる標高が上がる。
八合目付近に下山ルートの分岐があるが、立入禁止になっていた。
八合目からは直登で山頂へ。
傾斜はかなりあるので高度感あり。
山頂には浅間神社がある。
石祠の向拝には岩⃝の文字が彫られている。
江戸時代にこの辺りにあった講社「丸岩講」のマークだという。
(2022年05月02日訪問)