
別府保養ランドに宿泊して翌日。
朝イチでまず阿心院方面へ向かった。姉妹サイト珍寺大道場で面白そうなお寺が紹介されていたので、足を伸ばすことにしたのだ。

今回の旅は大分の南半分の観光の予定で、宇佐・国東半島方面は対象エリア外なのだが、このあたりまでならギリギリ別府から寄り道できると判断。
その目的地とは、地獄極楽桂昌寺跡と呼ばれる地下霊場だ。周囲は棚田が続く山がちな田舎で、観光地という感じではない。ただ、看板も出ていて駐車場もあったので場所は迷わなかった。

桂昌寺は室町時代に創建されたがその後荒廃していたのを、江戸後期(1820年頃)に午道法印巍純という僧が地獄極楽めぐりを整備して再興したと伝えられている。

さっそくお寺を見てみよう。
桂昌寺跡というが、お堂がいまでもありお寺の体を成している。廃寺というわけではない。

本堂の内部。
篭り堂のようになっている。
本尊は素朴な木像、十一面観音かな。

地下霊場はお堂の右奥のほうにある。

地獄パートは地下道でこんな感じ。
けっこう複雑で、地下で360度回転する箇所もあり、初めて入ると方角を失う。

極楽パートは地上にあって山の斜面に見えている。

まず入口へいざなわれる。
ここに英語と韓国語の案内板。

入口はどういうわけか擁壁に隠れるようになっている。
どうしてこうなった?

洞窟に入ると最初にあるのが、閻魔大王のいる「閻魔の庁」という部屋。
国東エリアというと磨崖仏が有名だけれど、仏は石造だが洞窟を構成している石材とは別。
左から、

閻魔大王は照明のせいで苔むしていて、おどろおどろしさが倍増中。

馬頭羅刹も顔が青みがかっている。閻魔大王配下の獄卒である。

馬頭羅刹。
牛頭、馬頭の獄卒を阿防羅刹ともいう。
石造の人頭杖って初めて見たな。(石造の業のハカリは見たことある。)

閻魔庁を過ぎるといよいよ地獄への入口である。
ただし電灯が付いているので、地獄感はちょっと薄れている。
南関東の地下霊場や富士の胎内くぐりはではローソクの火一本で巡る場所もある。この洞窟も内部には光が届かないので、ローソクで入洞したらかなり恐ろしい場所になったろう。

少し進むと通路は2つに分岐している。
左が極楽道、右が地獄道で、「先に地獄道へ→」という案内に従って右側の通路へ進む。

するとすぐにまた2分岐。
ここも右へ進む。
円環状になっていて、右へ進むとひと回りして左側から出てくることになる。

地獄のループ通路にはぽつぽつと壁に穴がうがたれていて、石仏が収められている。
都市王は十王の一人だ。まだ裁判は終わっていなかった!

円環通路の最も奥には血の池という地獄がある。
池のほとりには赤鬼、青鬼がいる。
近代的な地獄巡りにありがちなエログロ表現はなく、ストイック。そいうえば、地獄極楽巡りの日本最古のものってどこなのだろう?

道が円環状にカーブしているから、ちょっと先も見通せない。地下霊場としてよく考えてある。
案内図によれば賽の河原とされるエリアだ。

賽の河原出口には奪衣婆がいる。
だが、それよりも気になるのは「胎内くぐり」と書かれた穴!
かなり低く、四つんばいにならないと進入できそうにない。

しかもこの穴には電灯もなく、床は水浸しになっている。
別に身に危険が及ぶような支洞ではないけれど、ここを進むのにはそれなりの覚悟というか、服装が必要になりそうだ。
無理だな。

円環ルートを抜けて本洞に戻ると狭くて緩い傾斜がある。
ここが「菩提坂」というエリア。壁面は凝灰岩みたいな脆い岩肌なので、こすって服を汚さないように慎重に進もう。
ここも緩いカーブになっていて先を見通せないように作られている。

菩提坂を抜けると不動明王がいる。
どうやら地獄から抜け出したようだ。

先のほうに出口の光が見えてきた。
この辺には釈迦如来、普賢菩薩、文殊菩薩、薬師如来、地蔵菩薩、弥勒菩薩などの十三仏が1mくらいの間隔で並んでいる。

十三仏の最後、阿弥陀如来の下に小さな穴が。
地獄円環ルートの終わりにあった支洞、胎内くぐりの出口だ・・・。
うわぁ、これほふく前進でもしないと抜けられないよ?

最後のほうには洞窟の壁が崩落したのか、外とつながっている穴がある。

地蔵菩薩かなにかの石造が置かれている。
ここから外に出られる。

外に出ると少し大きめの阿弥陀如来立像と脇侍の観音菩薩、勢至菩薩がある。
ちょっと一息というところなのだが、よく見ると右のほうに次のルートが!

このルートがこの地下霊場最大の難所、「針の穴」だ。
ここを抜けないと真の極楽にはたどり着けない。

ん~ふむふむ、ここを上がればいいのかな~?
と覗き込んでみると・・・

なんと穴の先は垂直の縦穴になっている!
高さは5mって書いてあるけど、もう少しありそう。
一応、鎖があり、壁面に窪みもあるからがんばれば登れなくはない。
ただ問題は凝灰岩のような壁面の材質。穴は狭いのでどうしても背中を擦って、ケイビングのチムニーのような登り方にならざるをえない。石灰岩やチャートでも日常の服装で擦り付けるのはイヤなのに柔らかい凝灰岩となると、着替えでも持ってきていないとちょっと登りたくない。

ここを登って極楽エリアに到達することが、この霊場の本来のルートなのだが。
珍寺大道場の独観さん、よく登ったな・・・。

私は日和って、石段で極楽エリアへ。

とはいってもけっこうな斜面を登らないといけない。

極楽エリアは阿弥陀如来の九品仏で構成されている。

ちょうど草刈りした後だったからいいけど、季節によってはすごいことになっていそう。

針の穴の出口発見!

下りだけでも入ってみる???
無理か・・・。

いやぁ、すごい地下霊場だったな。ちょっと寄り道してよかった。
でも本格的に体験するには、泥まみれになるくらいの覚悟が必要そう。いつかそういう機会があるだろうか。

極楽エリアから田園を見渡せる。
直線的な棚田が多いな。古くからのものなのか、現代の土地改良の結果なのかは遠い土地のことなのでよくわからない。
(2011年08月07日訪問)