徳島県で
タバコ農家が多いといっても口山にベーハ小屋がたくさんあるというわけではない。「ベーハ小屋」は黄色種という品種専用の乾燥室だからだ。阿波葉は在来種タバコなのでベーハ小屋を必要としない。
そんな口山にあっても、はっきりとベーハ小屋だと言える建物がある。それがこの
夫婦窯とはベーハ小屋研究会によるベーハ小屋のレイアウトの分類で、2棟のベーハ小屋が並んでいるものをいう。さらに、このように棟が直線になる並び方のものを直列夫婦窯という。
このお宅は現在はもう葉タバコをやっていないがベーハ小屋を倉庫として残している。
2つの土蔵は棟の高さが揃っている。だがよく見ると左側の建物は明らかに片破風切り型のベーハ小屋だが、右側の建物には越屋根がない。
なぜ山奥の在来種産地にベーハ小屋があるのか。
山間地の在来種タバコ産地を黄色種に転作させようとした時代があったようなので、その時代に作られたベーハ小屋なのかもしれない。結局、黄色種への転作は気候や土壌などが合わず病気が発生するなど上手くいかなかった。
右側の建物は在来種用の乾燥室「
蒸屋側の連結面。
ガラス戸があるが、素材が新しいので倉庫になってから取り付けた後補であろう。
ベーハ小屋側の連結面。
通気窓や温風用の土管がある。
蒸屋の構造的な特徴は、高いところに「天窓」、低いところに「腰窓」という窓と、低い位置に換気口と、炉の吸気口があるということだという。
写真では窓は中間部分に2つあるが、これは「天窓」や「腰窓」という語感とは合わない。
下部を見ると、基礎のところに炉の吸気口らしきものは見つけることができた(矢印)。
吸気口の上の左右に木製の蓋のようなものがあるが、これが換気口であろうか。さすがにこの低い位置の開口部を「腰窓」とは言わないと思う。一般的な言葉でいえばこれは「
妻側の壁面を見ると、中間に窓がひとつあり、屋根のすぐ下にも窓がある。この屋根の下の窓が天窓と言えそう。
また、山側を見ると2階の高さに大きな開口部があるのはこれが本来あったものなのか、後補なのかは不明。
そもそも蒸屋に標準的な設計モデルがあるのかもまだわからないので、これからも注意して見てゆきたい。
八幡信哉さんの情報によれば、この夫婦窯のベーハ小屋側は昭和20年ごろ、蒸屋側は大正末に建てられたもののようだ。
(2008年05月11日訪問)