捨子谷の家々を訪ねてたどり着いた阿波葉農家、岡部家。
ご挨拶をして話を聞こうと思ったのだが、ご主人が寡黙な方であまり話も弾まず。とりあえず撮影の許可だけいただいて畑を見せてもらうことにした。
岡部家は主屋の前、横、裏の斜面とかなり広い面積に阿波葉を植えている。山の段畑で法面も含むのではっきりとはわからないが25~30アール弱のタバコ畑があるようだった。
高尾家で聞いたところによると、傾斜地で阿波葉を作る場合は、高齢者2人なら15アールくらいが無理なくできる面積で、その年の天候がよい(長雨や台風がない)なら20アールくらいできるそうなので、岡部家はやや規模が大きい。
岡部家の特徴は、他の農家で見たような蒸屋や、専売局フォーマットのハウス式乾燥室がないことだ。
その点はこれまで見てきた農家では西原家に似ている。
その代わり2棟の納屋があり、一時的な雨除けには納屋を使っているようだった。
もっとも阿波葉は野外での乾燥が基本であって、乾燥室は長雨などの際に中でストーブを焚く程度であって、積極的に火力で乾燥させることはないから、絶対に乾燥室が必要というわけではない。
乾燥が終った葉を収納しておくのは乾燥室である必要はなくほかでも通常の納屋に入れている農家もあった。
主屋の西側のタバコ畑の中に干し場があり、小さな納屋がある。
この納屋もハウス型乾燥室のフォーマットからは外れているが、おそらく干し終ったタバコを入れていく倉庫だろうと思う。
畑はマルチなし。
主屋の上側の斜面が面積的には大きなタバコ畑になっている。
許可証を見ると、この圃場だけで6,797本を植えている。
面積が書いてないが、本数から推定してこの場所だけで17アールほどの圃場があると思われる。
馬入れ(車道から畑に機械を入れる通路)が狭いので乗用トラクターは入れず、すべて管理機だけで耕耘と畝立てをしていると思われる。
これは現在残っている阿波葉農家の多くが同様の条件だろう。
貞光川の流域に残っている阿波葉農家は岡部家ただ1軒だけである。
言ってしまえば、この界隈では孤高の存在であると同時に、孤立無援の一人旅といった状況だ。
ここから見渡せるソラの家々にはもうタバコ農家はないのだ。
(2008年07月26日訪問)