捨子谷北の高台から谷を見おろすと、特徴的なヘアピンカーブがあり、その敷地にベーハ小屋のようなものが見える。
これ、別にドローンで撮っているわけじゃなく、ソラの集落ではこんなふうに空撮みたいな風景が見えるのだ。
近くまで行ってみた。
これは阿波葉の乾燥室だと思う。
ベーハ小屋にしては越屋根の換気力が心許ない。それに加え、ベーハ小屋は平面が2間×2間なのだが、この建物は長方形平面。
裏側から見たところ。
もしベーハ小屋ならば、こちら側に炉と煙突がありそうなものだが、そういった痕跡はない。
1階側の搬入口。
擁壁と階段がかなりきれいに施工されているが、これは車道を拡幅したときに工事したのだろう。
建物は崖屋になっていて、2階側からも入れる。
ところで、このヘアピンカーブの内側の圃場の作物、何だかおわかりになるだろうか?
左端に見切れているのはたぶんワラビ、中央の綺麗に畝が作られているのは藍である。
「徳島の名産といえばなんといっても藍!」と言いたいところなのだが、実は藍は上板町のあたりでわずかに生産されている程度で、それなりに注意していなければ見つけられない。
吉野川の氾濫原以外で藍が作られているのは初めて見た。
近くにおばあちゃんがいたので話を聞いた。
この辺りでむかし藍を作っていたのかと尋ねると、何十年も前にはあったらしいが、これはそれが残ったものではないとのこと。この畑は少し離れたところの上手な若い農家がやっているという。もっともおばあちゃんのいう「若い」だから、50~60歳代かも知れないけれど。
この一角で気付いただけで2面、15アールくらいの藍畑がある。
畑の様子を見ればわかると思うが、都会から自然農法に憧れてやって来た若者が、生活できないような作目を始めましたという風情ではない。
営農意欲の高いプロ農家が藍も手がけているという感じの手際の良い畑なのだ。
畑の片隅にはオカマゴがあった。
オカマゴは徳島の民俗で、緑泥片岩などの薄い石で屋根をかけた祠だ。
吉野川南岸の三波川変成帯に多く見られる。
先ほどの場所から貞光町の町のほうへ下ったところに、藍を育てている農家がある。たぶん捨子谷の畑もこのお宅が手がけているのだろう。
この場所だけでも20アールくらいの藍が植えられている。
専用の施設がない場合はこんなふうに畑で乾燥させるのか。
(2009年07月11日訪問)