池田駅前にあるショッピングモールは「日本たばこ池田工場」の跡地だ。
その駐車場から北側を見ると、商店街の背後に壁のような阿讃山脈がそびえ、その山の中腹に家々がある。西山地区である。
池田町の北側には吉野川が流れ、その対岸は急峻な斜面になっている。崖、といってもいい。山の上の平坦な土地は河成段丘ではなく地滑り地形だ。市街地からの地滑り地形までの標高差は約200~400mある。
これから紹介する南家は、この地滑り地形の下端、崖っぷちにある。
2008年7月6日。
場所を尋ね廻って、初めて南家にたどり着いたときはもう夕方だった。
畑の端には四国放送の定点カメラがあり、吉野川や池田町を写している。この場所が崖の上だということがよくわかる。
南家はこれまで見てきた阿波葉農家のなかでは、畑の傾斜が緩く、主屋の周りのニワも広い。
畑は藁を草除けに敷いていた。池田町のタバコ農家はどこもマルチを使っていない。
2008年は天候もよく、作柄は上々。もうすぐ収穫が始まるところだ。
タバコ畑は南向きで日照時間が長い。
背後に見えるのは池田町の市街地。
翌年、2009年5月31日に訪れた。
阿波葉の生産の最後の年である。
主屋の前の稲架には小麦が干してあった。
出荷するのではなく自家用なのだろう。
まだ阿波葉は小さい。
作付け面積は見たところ10アール。
今年は苗の生長が悪く、定植が1週間遅れたという。
畝間には刈り取った小麦の株が残っている。
管理機で耕耘しているみたいなので、株をすき込むにはパワー不足なのかな。
土寄せの作業が終わったところ。
使ってる農具は四つ熊手という、4本爪の鍬。
土は小石が混ざっているので、管理機の爪も減るのが早そう。
先祖代々長年有機物を入れて土を増やし、石を拾い出した畑なのだろう。
2009年8月18日に再び訪れた。
直前のNHKのニュースで南家が紹介されていた。取材を担当したのは私の知り合いのNHK徳島放送局のカメラマンだった。
今年は梅雨の前半空梅雨の後に豪雨、8月上旬の台風と天候不順で、残念なことに黄色種も含め多くのタバコ農家で病気が発生した。
私が見た限りでは、日照条件や風通しのよい開けた場所の圃場で病気が多かったような気がする。病気の種類は幹が黒くなる空洞病。今年は成長も10日くらい遅れているそうで、病気で葉が変色してしまった上のほうの葉を先に収穫していた。
主屋前の干し場。露天、ビニールハウス、ハウス型乾燥室、木造納屋の組み合わせで乾燥していく。
収穫したての葉は軽量鉄骨のハウス型乾燥室の中で黄変させる。
まだ発酵途中の葉は納屋の軒下にいれてゆっくり乾かす。
露天部分は日当たりもよく風も通るのでよく乾きそう。
主屋の前には褐変した最終段階の葉が干されている。
阿波葉の色づきってきれいだな。
主屋の前はタバコで日が陰るほど。
来年からはもうこの風景も見られなくなる。
作業記録。
収穫量は「連」という単位で数える。これは連縄1本という意味。1連はだいたい100~110枚の葉だ。たとえば、12日は上葉と本葉を60連、約6,000枚干したということだろう。
7月中に90連。8月に入ってからは雨天の1日、2日と休んだ後は、台風が通過した8日、9日も働いている。お盆も休んでいるのは15日だけ。大変だ。
(2008年07月06日訪問)