前回の旅で訪れる予定だったのだが、時間がなくて見学できなかった施設。おおまかに言えば、貝類の博物館である。
施設の感じからして、まじめに貝の勉強にくる人を相手にしている感じではなく、近隣の温泉地のパック旅行などの団体客がターゲットなのだろう。確かにかつて日本にはそういう旅行が中心の時代があって、ベルトコンベア式に流れてくる客をさばくだけで観光地が成り立っていたのだろう。
だが、現代では工場でさえベルトコンベア方式から、セル方式などの多様性に対応した生産方法に変わってきている。観光地もこれからは、自由意思で行動する個人個人を惹きつける魅力を持たないと苦しいだろうと思う。
ここファンタジー館は、私のようなコアな人々を誘因する強力なフェロモンを発してはいるのだが、それが逆にOLやファミリー層などに対しては、近寄りがたい雰囲気になってしまっているのではないかと気掛かりだ。
入口の外側からして、大量の貝が飾り付けられているので、中はさらにすごいことになっているだろうと期待がふくらむ。
入場料は700円で、かなり良心的な値段だと思う。もっとも水族館などと違って、安いからまた行ってみようか、という場所でもないのだが。
入口を入ると照明を落とした通路にそって、彩色されたおびただしい貝が並んでいる。
人魚のはだがザラザラして見えるのは、体が小さな巻き貝をびっしりと貼り付けて作られているからである。菊人形ならぬ「貝人形」といったところか。
イセエビやタコノマクラまで貝でできている。でもこのあたりですでに目が慣れてくるので、多少のことでは驚かなくなってしまうのが人間というもの。
おびただしい貝の展示が延々と続くのだが、すでに感覚がマヒしているため、ひとつひとつの展示がどんなものだったのか、ほとんど思い出すことが出来ない。
ただただ、こんな大量の貝をどうやって集めたのだろうと不思議に思っていたのは覚えている。
三河湾は貝の水揚げが多いというのと関係があるのだろう。
ウニのようなものが天井から床までびっしりと貼り付けてある胎内洞窟。
ここまでする必要があるのか…、と思わずうめいてしまう非常識な空間だ。
もはや貝の展示というよりは、この貝をコレクションした人間の執念が展示されていると表現するのが適切だろう。
貝でできた樹。…だと思う。
後半にあった竜宮城。竜宮門が奥に見える。竜宮城の御殿がどんな建物かと聞かれても私も答えに窮するが、とにかく門だけは竜宮門であるというのが日本人の共通したビジョンなのだろう。そのイメージはいつごろどうやって作られたのだろうか。
浦島太郎が電動で回転していた。
出口付近には、めずらしい貝などの一般的な展示もある。
この写真で、他の観光客が写っていないのは、観光客がいなくなるのを待って写していたわけではない。私以外にほとんど客がいなかったのだ。いても私よりも早足で見学していた。
蒲郡ファンタジー館はこの後しばらくして閉館した。その後、オーナーが変わり、2014年リニューアルオープンしたという。
(2001年11月23日訪問)