時刻は午後3時頃。ぼちぼち帰路についてもよい時間帯なのだが、ふと岡崎市北部にいつか行ってみたいと思っていた寺があったのを思い出した。
それはこの大樹寺ではなくて、このあと訪問する真福寺なのだが、せっかくだから大樹寺にも立ち寄ることにした。
大樹寺は松平徳川家の菩提寺として有名。お勧めの寺、というわけではないが、多宝塔もあるし、入場料や駐車場代を取られるでもないし、気軽に立ち寄れる町なかの寺なのだ。
総門は寺の南側の小学校の敷地にあり、参道は小学校の敷地を通って山門へと続いている。将軍家の菩提寺にしては、周りに人家がせまっていて、参道もあっけない。
山門は三間一戸の二重門。三間の山門としてはかなり巨大だ。唐様を中心とした様式していて、左右には山廊がある。山廊とは大型の山門に登るため(登らせないため?)の階段室である。
組み物は三手先で、詰組(つめぐみ)になっている。詰組というのは、梁の上に組み物が載っている造りのことだ。通常、組み物は屋根の荷重を柱に伝えるものだから、柱の真上から始まっている。三間の山門なら間口には4本の柱があるから、4ヶ所から組み物は積まれるのだ。ところが唐様の場合、柱と柱の間の空間にも組み物を置く。その組み物の荷重は梁の中央にかかることになり、梁を曲げる力として働く。それは合理性に欠ける構造だ。和様の楼門にくらべ、ごちゃごちゃしていて機能美に欠けるように感じる。
本堂は巨大で、方丈形式。
徳川家の菩提寺といってもあまり気取った感じではなく、境内が駐車場になっていたりする。
本堂の左側には廟のような建物があった。
さらに左へ進むと、墓地の中に多宝塔がある。国重文。
和様の美しい塔だ。多宝塔の名塔といえば、石山寺の多宝塔が有名だが、その美しさはあまりにも鎌倉時代的すぎて、一般的なモノサシにはなりえない。
この塔は石山寺のそれとはまた違った良さがある。背の高いタイプ(つまり一般的なスタイル)の多宝塔としては、お手本となるようなバランスの塔だと思う。
本堂の右側には、庫裏、袴腰鐘楼。
宝物館などがある。
本堂前にあった水盤舎。
(2002年02月11日訪問)