龍田神社。
小学校や郵便局などが集まる加茂町広瀬地区の中心部にある神社。村の総鎮守なのだろう。
山門は八脚門の随身門。寺院の仁王門に相当する門である。
仁王門では仁王は立像で人間よりも大きく作られている場合が多いので、仁王を配置する部屋の床は土間になる。それに対して随身は人間よりも小さなサイズで作られた木像なので、床を高くしないと参拝者の視線と合わなくなってしまう。このため一般的に随身門では床が高く作られるのだが、この地方では床下が抜けているのが特徴のようだ。このあと紹介する神社の門を見るときもここは着眼点となるだろう。
随身門をくぐると、右側に社務所、東司がある。
拝殿前の石門には「尊皇即愛國」などというイデオロギー丸出しのスローガンが彫られている。
拝殿は五間の入母屋平入りの造りで、三方がガラス戸になっていて採光の多い堂だ。もともとは蔀戸だったのだろうか。
拝殿の背後は土地が一段高くなっていて、本殿には石の間でつながっている。
本殿は入母屋造で、思いもよらず立派な建築だった。
非常に軒が深く、屋根の勾配や反りの様子も悪くない。ぱっと見た感じは、江戸のごく初期か安土桃山あたりまで遡るのではないかと思わせる建物だ。
向拝がやや長すぎるようにも見えるが、これは元々石の間の上に乗り上げることを前提としたバランスになっているのだろう。それでOKだと思う。
軒まわりを見ると、長すぎる向拝を支えるためか不自然な虹梁(写真の薄茶色の梁)と向拝柱がある。これは後補ではないだろうか。白塗りのエビ虹梁が意匠的にも美しく力強い感じがするのに対して、薄茶色の虹梁は締まりがなく、同じ仕事には見えない。
とはいえ、この本殿は目の保養になる建物だった。
神社のとなりの敷地には砲弾型の忠魂碑があった。
(2002年08月26日訪問)