谷ヶ沢の庚申塔

庚申塔の古い形態だという。

(群馬県高崎市上里見町)

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飼育所を探していた集落の辻に、素敵な火の見櫓があったので、近づいてみると、墓地の中に文化財の看板があった。

説明によれば、庚申塔の古い形態は青面金剛像ではなくて、このような石宮型なのだそうだ。この物件には、三尸(さんし)の虫が刻印されていて、庚申信仰のものだとわかるのだと書いてあった。庚申信仰は、人間の体内に住んでいる三戸の虫が、寝ているあいだに神様に悪事を報告に行くのを防ぎたいという信仰。

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その横には、小屋掛けされた「何か」があった。

普段の私なら、この御簾をめくるであろう。だからこのときもめくったのだと思う。だが中に何があったのか覚えていない。こんなこともあるんだろうか。

疲れていたという記憶もないのだが・・・

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宮沢稚蚕共同飼育所の見櫓はこれ。4本柱で、うち2本がハシゴを兼ねている。半鐘は取り外されていた。

これで旧群馬町から旧榛名町にかけての稚蚕飼育所巡りはおわりだ。ここから上流の旧倉渕村は、いずれ稚蚕飼育所巡りとは別の目的で訪れることもあるかも知れないが、とりあえず榛名南面はここまでとしたい。

赤城南面ではブロック電床育が主流で、壁面もブロック積みの飼育所が多く、土室育の痕跡を持った飼育所は数えるほどしか見つからなかった。それに対して榛名南面では、下部に土管の痕跡を残す木造の飼育所が比較的多く残っているのが特徴と言えるだろう。またそれらの飼育所の一部は、大棟から換気せずに、壁面の窓を大きく取って採光と換気を兼ねる構造をもっていたのも特徴的だ。これは他の地域にもあるのか注意して見ていきたいと思う。

榛名南面で特筆すべき飼育所は、建設当初から土室電床育だった疑いのある宮沢稚蚕共同飼育所と、古いにもかかわらず群馬式ではない新屋敷稚蚕飼育所であろう。これらの発見によって、赤城南面で推測してきたよりも複雑な進化の系統樹が浮かび上ってきた。

これは引き続き、榛名北東麓や、碓氷、甘楽地方の飼育所巡りを続けねばなるまい。

(2007年05月05日訪問)

日本俗信辞典 動物編 (角川ソフィア文庫) 

文庫 – 2020/4/24
鈴木 棠三 (著)
動物、海の生物、虫などの生物に関連する俗信を約2800話収録。解説・常光徹

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シリーズの中でも最大の750ページ。養蚕の豊凶など興味深い内容ばかりでした。