その地域で目立つ寺、というのがある。紹介はしていないが、たとえばきょう通ってきた県道10号線でいえば、安中から富岡に入ってしばらくしたところの右手に見える、擬宝珠を載せた宝形屋根の藤木観音堂などは、10号線のシンボル的なお堂だと思う。
黒岩の大日堂(遍照寺)も、この道を通る者に強烈な印象を残す寺だ。
右上の地図をクリックしてみるとわかるのだが、寺が街道をふさぐように立地していて、車道は境内をよけながらカーブしている。
もともと街道は境内の中を抜けるようになっていたのだろう。
そこに朱塗りの楼門と朱塗りの観音堂が建っているのだからかなり目立つ。
仁王像まで朱塗り。
かなりマンガチックな仁王像だ。
楼門の抜きや欄間の彫刻にも派手なペイントがされている。いかにも北関東にありがちな塗り方だ。
一般的に仏教建築のグレードを決定するのは、全体の姿が端正だったり、屋根の葺き方だったりする。だが、北関東では、普通の堂→組み物がごちゃごちゃしている堂→組み物がごちゃごちゃしていて色がべたべた塗ってある堂→その色に黒・白・金が多く使われている堂(=いわゆる本式の極彩色)、というふうにグレードが上がるのである。
最近の寺には珍しく、気軽に楼上に登れるようになっているのが嬉しい。
楼上には鐘が吊るしてある。
このように、楼門の2階が鐘楼を兼ねている山門のことを「鐘楼門」と言う。
せっかくなので楼上から本坊の様子を写す。
本坊は車道をはさんで北側にある。
境内と本堂の様子。
本堂は入母屋妻入りで、朱塗り。
桜の季節にここを通ったらさらに強烈な印象を残すだろう。
山門の前には水盤舎(左写真)と地蔵堂がある。
水盤舎まで朱塗りというのが徹底している。
本堂の大日堂。
唐破風付きの派手な向拝、組み物は三手先、二重茂垂木で朱塗り。木鼻、手挟み、支輪は透かし彫り彫刻になっている。全体の意匠は弱い唐様を含んだ折衷様式。
群馬県の極彩仏教建築の水準からすれば、ほぼ頂点に君臨できる堂といっていいだろう。
ふと、本堂の下にしめ縄がかかっているのに気付いた。
なんだろう・・・。
縁の下にはいろいろな資材などが詰め込んであるが、その中を縫うように踏み固めたような通路がある。
どうやら、参詣用の順路っぽい。
かがみながら床下を進んで行く。
途中には、特別な拝むべきものや、触れるべきものもなく、暗い通路の中を進む。
通路は反対側まで抜けていた。
案内板を見るとこの通路を潜るとはしかが軽くなるとある。最近、変な堂にあまり巡り合っていなかったので、ひさびさに面白い体験ができた。
このお寺、高校時代に一度来たことがあるのだが、そのときここを潜ったのかどうかが思い出せない。もしかしたら当時しめ縄がなく気付かなかったのかもしれない。
本堂の裏に詳細不明のお堂があった。
なおこの寺には、元禄時代に村民が掘り出したオオツノシカの化石のスケッチが残っているという。
(2008年05月02日訪問)